なぜ東京オリンピック2020のマラソンを札幌で行わなければいけないのか

東京オリンピック2020のマラソンが札幌になるかもしれない。東西対抗東海道53次ウルトラマラソンを走る直前に、そんなニュースが飛び込んできました。そのときは情報が錯綜している状態でしたので、状況を把握することもできず文章にできませんでした。

そこからしばらく経過して、ようやく全体像を把握できるところにまできました。話はとてもシンプルです。

IOC
・東京は暑くて危ないから札幌で走らせたい
・ドーハのような結果にはしたくない
・オリンピックはアスリートファーストであるべき

東京都
・勝手に変更されても納得できない

IOCの言っていることは正論ではあります。すべての競技はアスリートのためにあるべきで、可能な限り最適な環境で競技を行えるようにするのが理想です。ただ、札幌で開催というのが「可能な限り」の範囲内なのか。

もっとも東京都も札幌開催が嫌だと言っているのではなく、こんな筋の通らない話を簡単に認めてはいけないという思いがあるのでしょう。これは「マラソンを札幌でするならオリンピックそのものから東京は手を引く」と言ってもいいくらいの話です。

これまでIOCと打ち合わせもしてきて、暑さ対策にかなりのお金を注ぎ込みました。遮熱性舗装だけでもかなりのお金を使っています。東京マラソンなどのイベントを使って警備のシミュレーションもしたことと思います。

その結果、MGCは大成功に終わり、あとは本番までに十分な準備をするだけというところにまでこぎつけたのに、IOCの理屈だけで開催場所を変えられて「はいそうですか」というのでは、トップとしての資格はありません。

そういう意味では小池都知事があのような反応をするのは当然のことです。毅然とした態度でいることが大事ですし、簡単に折れる必要もありません。「北方領土で」という発言は不要でしたが。

100歩譲ってマラソンを札幌開催にするにしても、その譲歩に見合うだけのリターンを得ない限り小池都知事の政治的手腕が疑われてしまいます。

スポーツに政治の話を引っ張り出すなというかもしれませんが、オリンピックに手を挙げたのは東京都であり、都民の税金を使って準備をしてきました。なのに都民は沿道でマラソンを応援することすらできません。

だから、あの態度は別に構わないと、わたしは思っています。石原慎太郎さんが知事だったら「ふざけるな、勝手にしろ」と、本気で手を引いていたかもしれません。

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繰り返しますが、札幌で開催することが悪いと言っているだけではありません。ただ、東京都の人と小池都知事はくやしいだろうなと。好きか嫌いかでいえば小池都知事のことは嫌いですが、それとこれは別の話。

この前例を認めたら、IOCは好き放題していいということになります。これから開催都市になるところのためにも、楔は打っておく必要があります。

実際問題として札幌でいいのかというと、もっと他の案もあろうかと思います。涼しいだけなら軽井沢・箱根・富士五湖でも良いわけですし。そのあたりは、賢い人たちが提案してくれるのでしょう。

問題は「本当に東京を走れないのか」ということです。

午前6〜8時の東京で、熱中症になるほどの暑さになるとは思えません。理想は午前4時30分スタートですが、そうなると選手は2時には起床することになるので、選手に負担がかかります。

何も考えずに午前6時スタートにしたわけではないはずです。

「0時スタートにすればいい」なんてことを言っている人もいるようですが、きっとマラソンを走ったことがないか、無知であることを自覚していないのでしょう。0時と午前6時のどちらが走りやすいかなんて、説明するまでもありません。

小学生で習うような話です。

MGCがあの時間で問題なかったのですから、オリンピックもそれほど大きな問題にはならないはずです。それはIOCだって理解しているはずです。なのにこうなってしまったのはなぜか。

ここからはわたしの妄想の話です。

おそらくIOCが本当におそれているのは、暑さではなく台風なのでしょう。ラグビーのW杯の試合が中止になったわけですから、「東京オリンピック中に台風が来たらどうするのだ」と焦ったのでしょう。

放映権も含めて多額のお金が動きますので。台風でマラソンがなくなったときの損失を考えると、台風のリスクが少ない札幌がいいわけです。

ただ今回の関東の被害を考えたとき「台風があるから東京ではしたくない」なんて言えるわけがありません。ちょうどドーハの世界陸上でマラソンの環境が悪いという指摘があったので、それに乗っかったというところでしょう。

もしかしたら、IOCも小池都知事もJOCもそれをわかった上で、みんな芝居を打っているのかもしれません。IOCはともかくJOCの森会長と小池都知事は芝居を打っている可能性は大いにありますが。

森会長が悪役を買って出て、小池都知事が怒りをぶつける。それによって都民は「ちゃんと自分たちのことを考えてくれてる」と思えるわけです。そこまでしてくれるなら仕方ないかとなれば、札幌開催もスムーズにできます。

小池都知事が「納得できない」と怒りをあらわにすることで、追加でかかる費用だってIOC負担にしやすくなります。ふたつ返事でOKしていたら、IOCは調子に乗って「費用負担も東京都持ちね」なんて言い出しかねませんから。

そんな策士がこの国にいるのかどうかはわかりませんが、そんなストーリーが隠されていたらオリンピック競技と同じくらい面白いなと。「10年後に明かされるあのときの真実」みたいなレポートを読んでみたいものです。