第53回愛媛マラソン完走記〜愛媛マラソン史上最も過酷な1日〜

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2月8日、天候は曇り。冷たい西風が少し強く、立っているだけで体温を奪っていく。予報では雨が降るかもしれないとのことだったが、わたしは寒くない程度に上着を羽織っただけでスタートラインに並んだ。スタート時にはまさかあんなことになるかだなんて想像もしなかったから。

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わたしはアスリート枠をもらっていたのでAブロックスタートだ。とは言え、今回は直前で胃潰瘍が発覚したので、とにかく完走だけが目標になる。間違っても周りのペースに惑わされてはいけない。5分/kmから6分/kmのペースで十分すぎる。実際にはスピードを走りながら決める。胃に負担がかからない最大限のスピードを出すことになる。

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走り方は自己流ナンバ走り。久しくナンバ走りをやっていなかったが体が覚えているので、動きだけはなんとかなる。とにかく体をねじらずに、内臓の負担を可能なかぎり小さくすることが目的だ。走り始めは5分/kmの前半で問題なく動けていた。これはもしかしたらサブ4は余裕ではないかと思うほど。

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周りにどれだけ抜かれても気にしない。自分のペースを守りながら進んでいく。母の待つ5km地点は順調、叔母の待つ12km地点は余裕があったが応援で集まった地元の人が多くて、叔母を見つけられず。そうなのだ、愛媛マラソンはほとんどの場所で声援が途切れない。こしてこの応援の素晴らしさを強く感じる出来事が起きるのだがそれも後ほど。

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この大会の魅力のひとつはふんだんに用意されたエイドだろう。21ヶ所もあるので、ほぼ2キロに1ヶ所の計算になる。そして、素晴らしいのはそのうちの4ヶ所に愛媛の銘菓があり、特産品が2ヶ所ある。一六タルト、山田屋まんじゅう、ハタダ栗タルト、じゃこ天、七折小梅、うつぼ屋坊ちゃん団子。

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パンのエイドもあるのだが、Pascoからおそらく6種類は用意されていたはず。それらのエイドに加えてボイラーで有名なミウラが私設エイドを大々的に会社前で出している。個人の私設エイドは無数にある。そして、誰もが期待しているポンジュースは2ヶ所で提供している。

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17.5km地点のエイドで出る一六タルトを皮切りにグルメラン状態だ。ちなみにこの一六タルトは3種類提供してくれている。すべて味わいたかったのだが、さすがに欲張りすぎだと思い抹茶とプレーンの2種類いただく。そして当然水分が欲しくなる。食べたまま走ると喉を詰まらせる。

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次のエイドは山田屋まんじゅうだ!と思ったところで事態が急変した。突然の大嵐になったのだ。まず風が吹きはじめ、エイドのコップ類が飛び散ってしまう。そして、徐々に雨が加わり、最終的には雹となってランナーと応援者に襲いかかったのだ。誇大表現でもなんでもない。本当に襲い掛かられた。

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風速10m/sで雹が向かいから飛んでくるのだ。正直身の危険すら感じる状況だ。あっという間に太ももの感覚がなくなる。その状態で走ろうとするからムダに力が入って一気に疲労が出てくる。その時点でわたしはサブフォーは諦めた。とにかく足の感覚を取り戻して、走れる状況を取り戻すのが最優先だった。

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雹は結局10分以上続いただろうか。すごいと思ったのはそんな状況で誰一人として応援を送るのをやめようとしなかったのだ。応援に来た人も傘なんて持っていない。雹に降られながら声援を送ってくれる。愛媛の人は本当に暖かくて優しくて、そして強い。わたしはここから声援に答えるためだけに走ったような気がする。

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ひさしぶりのナンバ走りのせいで、普段使わない筋肉が悲鳴を上げはじめていたが、胃の痛みでなければ耐えなくてはならない。そうでなければ、あの嵐の中声援を送ってくれた愛媛の人たちに申し訳ない。ただ、スピードはあげられない。ゆっくり過ぎて足のあちこちが痛く、少しスピードを上げれば楽になるのだが、胃が反応する。

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32キロ地点で叔母からエネルギーをもらい、そこからはずっと沿道の声援に「ありがとうございます」と応え続けた。全力で走れないお詫びではないが、走る姿で応えられないなら、声で返すしかない。疲労が溜まって走れなくなってきた周りのランナー一人ひとりに声をかけていく。わたしにできるのはそれだけ。

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39キロ地点で母の顔を見たときは安心して気が緩みかけた。自分に言い聞かせるように、さらに声援に応え、周りの人を励ましていく。「ここからがんばろう」「全部出しきろう」そういう言葉に反応してくれて再び走りだす人が何人もいる。「ありがとう」の言葉がさらに沿道の声援を大きくしてくれる。

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いつもだったらここでラストスパートしてしまうところだが、家を出るときの母からの一言がわたしを救ってくれた。「ゼッケンに行くなって書いてある」。そう、わたしのゼッケンが10197だったのだ。飛び出したくなる気持ちを何度もゼッケンを見なおして自分を抑えた。ここまで胃を守ったのにここで行ってはいけないと。

4時間20分40秒

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どれだけハイタッチをしただろう。最後はもうずっと笑顔だった。時間はいつもよりも1時間以上かかったがこれぐらいあっという間に感じたフルマラソンは初めてだ。ほんの少しも長いとは思わなかった。苦しかったがその何倍も楽しかった。コンディションで言えば愛媛マラソン史上最も過酷ではあるが、だからこそ多くのものを得ることが出来たレースになった。

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また戻ってこよう。来年はサブスリーを狙えるコンディションで。そして、声ではなく走りで応えよう。伊予路の声援がわたしをサブスリーに導いてくれるだろう。