リセットする力

昨日はニューバランスの厚底シューズ「FuelCell Speedrift」について書いたが、すでに次のアイテムのテストをしている。それはまだ開発途中の製品だから写真を出すことはできないが、わたしが愛するサンダルの新モデルだ。

1日にして厚底から超薄底へ。天国から地獄みたいな話だが、個人的には地獄から地獄。UberEatsの配達で体力を使っているということを言い訳に、練習会以外でランニングをサボり、走るための筋肉が低下、特に裸足力が低下していて、極度の筋肉痛に襲われている。

感覚みたいなものはすぐに戻るが、足裏の反応や筋力というのは、使っていないとどうしても低下する。「FuelCell Speedrift」は厚底シューズだが、わたしの感覚では足裏の反応や強度が求められる1足で、サンダルも同じものが求められる。

いずれも裸足力がないと履きこなせない。正反対な外観のシューズなのに、いずれも裸足力がないと履きこなせない。厚底シューズは感覚が鈍くなり走りが雑になるという印象があったのだが、ニューバランスのFuelCellシリーズはそうではないのかもしれない。

他のモデルも履いてみないとわからないが、あのクッション性は間違いなく、足裏で感覚と筋力がとても重要になる。そういう意味では、FuelCellシリーズはあまり売れないかもしれない。ナイキのように万人向けではないので、誰から履き方を解説する必要がある。

お前がすればいいと思うかもしれないが、ニューバランスに対してそこまでする義理はない。お抱えのトップランナーがいるのだから、その人たちに発信してもらうといいだろう。神野大地さんなら、わたしよりもよっぽど分かりやすく、説得力のある言葉で解説してくれるだろう。

ただ、わたしは裸足がベースにあるという強みを持っている。これは世界中にいるシューズレビュアーの中でも特異なタイプだろう。そもそも世の中の裸足ランナーの多くがシューズ嫌いなわけだから、シューズ好きの裸足ランナーというのはそれだけレアキャラだ。

裸足の感覚を持ち、そこをベースにシューズを評価する。当然他のレビュアーとは視点が変わってくる。問題はわたしの感覚を共有できる人が少ないということ。わたしはいくつかのシューズレビューをしているが、書いたことが伝わっているのか不安になることもある。

だが、それでも読んでくれる人がいるということなので、ある程度の需要はある。そう考えると裸足ランナーで良かったとは思う。裸足ランニングに出会っていなければ、わたしは今ごろ可愛らしい妻と子どもと大きな白い犬に囲まれて……ん?そっちの未来のほうが良さそうじゃないか?

今は裸足ランニングのグループとは交わることもないが(個人的な付き合いはある)、裸足ランニングには感謝している。

わたしは基本的に裸足ランニングを誰かに勧めたことはない。こんなものは好き好きだし、必要性のない人までやるようなことではないと思っている。膝の故障などで走れなくなって困っているなら、ひとつの方向性として示すことはあるが、問題ないならオーバートレーニングに気をつけてシューズを履けばいい。

裸足で走ればアーシングできるなんて言っている人もいるが、わたしはそんなものを感じたこともないし、そんなことのために裸足で走るつもりもない。地球と繋がって何になるというのだろう。それよりも可愛らしい妻(候補)と繋がれる方法を教えて……いや何でもない。

ただ、裸足で走ることはナチュラルな状態であり、そこが戻るべき基本だとは考えている。わたしはいろいろ試しているが、裸足ランニングがベースにあり、そこを起点に挑戦しているので崩れたときは、原点に戻ればいいと考えている。

このベースがあるから、厚底シューズも履けるし、サンダルでも走れる。立て続けに履き替えても、走りが崩れることもない。このような戻るべき形を持っている人は強いと思う。ランニングだけでなく、あらゆる世界において。

自分をリセットする力とでも言えば伝わるだろうか。

プロ野球選手はシーズンごとに打撃フォームや投球フォームを変えることがあるが、あれも自分をリセットする力があるからできることだろう。基本となる自分のスタイルがあり、上手くいかなければそこに戻ればいい。それがあるから挑戦できる。

ライティングにおけるリセットする力がどこにあるのかは、まだわからない。ただきっとあるのだろう。そうでなければ、小説家が次々に新しい作品を書いたり、同時並行で連載するなんてことは考えられない。もしかしたら「書かないこと」がリセットかもしれないが。

いずれにしても、わたしには裸足ランニングがある。それがひとつのキラーカードで今の自分の原点でもある。ただ、裸足力の低下を感じているし、情熱もだいぶ薄れているのを感じている。ここからさらに進化させるのか、それとも現状維持で満足するか。

こう言葉にすると進化させるべきと思うのだが、与えられた時間には限りがある。わたしは裸足ランニングを極めたいのではなく、ランニングを楽しみたいのだ。だとすれば、必ずしも進化させる必要はない。いつでも戻れる場所にしておくだけで十分だろう。

わたしは欲張りな人間だ。何かを極めるよりも、あれもこれも体験したい。ただ、そこにブレない軸は必要だ。進化をさせるつもりはないが、たまには立ち止まって整えるくらいはしておこう。急がば回れと昔の人がそう教えてくれていることだし。

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