3月の繁忙期に引越し業者7社に断られて、新生活をホテルでスタートさせた人がいるというネットニュースを斜め読みしました。そういう私は生まれてからおそらく9回の引越しを経験しており、さらに依頼を受けて引越しに関する記事を書いたこともあるので、引越しに関してはそれなりの知見があります。
引越しの回数はおそらく9回ですが、北海道や伊豆高原は引越しを伴わない新生活のスタートでしたので、新生活というのはこれまで11回経験してきたことになります。もっと多いという人も当然いるわけですが、自慢できるほどでもないにしても、決して少ない数でもありません。
これだけ引越しをしているのですが、一人暮らしをするようになってから、3月の繁忙期に引越しをしたことが1度もありません。基本的には独立や天職をともなう引越しで、そうでないものも派遣先の変更によって藤沢から三島に引越したので、いつも世の中の流れに関係なく引越しをしています。
そのため引越難民になったことも、なりかけたこともありません。姉が愛媛県に引越しするときがちょうど繁忙期で、ものすごい高額をふっかけられたと聞きましたが、今となってて高額でも引越しできるだけマシだったのかもしれません。
引越業界には2024年問題というものが起きています。この2024年問題というのは、これまで時間外労働規制が適用されなかった物流や運送業界のトラックドライバーが、時間外労働規制の対象になることで、1人あたりの労働時間が短くなるため、輸送能力が足りなくなる問題のことをいいます。
これまでは労働時間を無視して、1人あたり10の輸送力を持ってたトラックドライバーを10人抱えていた会社があったとします。この会社のトータルの輸送力は100になるわけですが、労働時間を守らなくいけなくなって、1人あたりの輸送力が9に低下したとします。そうなると会社の輸送力は90になり、10の仕事を請けられなくなります。
ここでは会社としましたが、社会全体のトラックドライバーの人数が限られており、社会全体の輸送力が落ちてしまっているのが現状です。だから効率のいい輸送や、トラックドライバーの作業をシンプルにするなど、どの運送会社もいろいろ工夫をするわけです。
ところがここでやっかいなのが引越しなわけです。引越しは日本社会の仕組みとして、どうしても3月に集中します。でもそこにあわせてトラックドライバーを抱えていると、残りの11ヶ月は仕事がないのにトラックドライバーに給料を払わなくてはいけません。
ひとつの引越会社で受けられる引越し回数はこれまでも限られていたのですが、たとえば特別手当をつけて運んでもらったり、協力会社に高いお金を払って運んでもらったりしてきました。ところが2024年からはそれができなくなっているわけです。引越したい人の数に対する輸送力が物理的に足りていません。
そんなことはずっと前からわかっていることなので、2月のうちに引越しするとかすればいいじゃないかと思うかもしれませんが、多くの会社が直近になるまで辞令を出しません。大学が決まるのも国立大学だと3月になり、国立大学を受験する人は、その結果がわかるまで引越できません。
もうこの仕組みを変えなくてはいけない時期になっています。たとえば大学入試の合格発表は1月末までにするとか、会社の辞令は特別な理由がない限り3ヶ月前までにするか、年度末での転勤を禁止するなどの社会的な構造の変化がない限り、引越難民問題は解決することはなく、いずれ大きなトラブルの火種になります。
社会がもっとフレキシブルにならなくてはいけない。昔のやり方が通用しなくなっていることがたくさんあります。ただ、大きな社会問題にならない限り何も変わらないのでしょう。なので来年は軽貨物車でも買って、3月は引越屋さんの真似事をしてみるのもいいかもしれません。そのためにはまず筋トレから始めなくてはいけませんが。