おひとりさま天国:集団から個へ、個から集団へ

かつて中国は1人だと外食をしにくい国のひとつでした。同じ中華圏でも台湾はおひとりさまでも食事を楽しめるのですが中国は1人で食べるとなると面もしくはフードコートに行く必要があり、朝ごはんを除いて1人で食事をするのは大変でした。

今でもそのようなところは残っていますが、以前よりも選択肢は増えているように感じます。たとえば一昨日食べたハンバーガーとクラフトビールのお店は休日ということもあってか、おひとりさまも多く、夕食で入ったお店も1人で食事をしている若い世代の人の姿が目立ちました。

中国は家族や仲間を大切にする文化があります。日本人からすると意外に感じるかもしれませんが、中国は個人主義ではなくどちらかといえば家族主義で、きちんと共産主義らしさが残っています。ただそういうのも時代とともに薄れているように感じています。


中国の一人っ子政策の影響が出ているのか、それとも個人主義の気楽さに目覚めたのか。いずれにしても、今の中国においては1人を楽しんでいる人が増えているのは間違いありません。中国で少子化が進んでいるというのも、きっとそれが関係しています。

集団であることから抜け出すことにはメリットもデメリットもありますが、良い点だけを挙げるとするなら「自分で考える」ようになるということでしょうか。集団のルールに則らないようになるわけですから、自分で考えて自分で行動するようになります。

ある部分ではそれもデメリットにもなります。日本でも2000年くらいに、当時のサッカー日本代表の中田英寿さんが個を重視し、年功序列のような考え方を排除していきました。当時の大学生には上下関係を嫌って、自分の言いたいことをはっきり言うけど実力がともなっていない偽中田英寿だらけになっていたのを覚えています。


それが悪いということではなく、旧世代との衝突がそこにあり、社会的には「良くないもの」となってしまうことがよくあります。もしかしたら中国の学校や会社でも似たようなことが起きているのかもしれません。でもそういうのもいずれ解消されていきます。

昨年秋の万里の長城マラソンのボランティアスタッフがものすごく優秀で、今回も大会をサポートしてくれるのですが、彼らに初めて会ったときにも、これまでの大学生にはない個性を感じたことをここに書いたような気がします。

そのときは「コロナ禍で集団生活ができなくなったことで、自分と向き合う時間が増えた」みたいなことを書いていたことをいま思い出しました。そのことをすっかり忘れていたわけですが、彼らとは別の場所で似たような感覚を受けたのは、やはり中国社会全体が私の知らない方向へとシフトチェンジしているのかもしれません。


このまま個を大切にする社会へと突き進んでいったとき、共産主義というのがどうなるのかも気になりますし、中国そのものがどこへと向かうのかも気になります。ただ、私が思い描いている未来とはまったく違うものになるのは間違いありません。

栄枯盛衰。変わらないものはひとつもない。それがこの世界の真理のひとつであり、その現実をいま北京で目の当たりにしています。街も人も変わっていく。もしかしたらそれは日本でも同じなのかもしれません。そこでずっと暮らしているから見えないだけで、実は大きく変化している。

そういえば日本もずっと以前からおひとりさま天国。ただその状態もどこかで変わっていくのかもしれません。人は結局のところ1人では生きられません。個の時代がやってきたらそのあとは家族や仲間を大切にする時代がやってくる。それが1年後からなのか、10年後からなのかはわかりませんが。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次