王府井:過去ではなく未来へ

昨秋の北京は滞在期間が限られていたのもあって、万里の長城マラソン以外は何もしていませんでした。そういう意味では今回は4年半ぶりの北京。2日目は過去の記憶を巡るように、好きだった場所を歩いてきたのですが、さすがに4年半もあると何もかもが違います。

秋に感じたのが中国は衛生管理を徹底しているということで、それは前回見た限られた地域だけでなく、隅々まで行き届いていることを強く感じています。少なくとも北京には薄汚い場所はどこにも見つかりません。ただそれはいいことばかりではありません。

王府井に行ってきました。かつて北京最大の繁華街と呼ばれていた場所で、ただ1度廃れてしまった場所でもあります。古き良き北京が残っていたという表現もできます。それを代表するのが王府井の屋台街。きれいさっぱりなくなっていました。


中華圏としては珍しく、北京にはそもそも夜市や屋台街というものがほとんどありません。ただ、観光地ということで王府井には蠍やら臭豆腐やら、北京らしい食べ物を出す屋台が並んでいました。かつてぼったくりにあったこともあります。

そういうのも含めて北京を象徴する場所のひとつなのですが、跡形もなく入り口の門だけが寂しく立っていました。衛生管理をきちんとするとなると、最初に矢面に立つのは屋台。屋台の衛生管理を許したら示しがつかないのでしょう。

什刹海のほとりにあるお店もちょうどリニューアル工事の真っ最中で、いかがわしい雰囲気はきれいさっぱりなくなっていました。三里屯のバーストリートもなくなったそうです。時代の流れがそうさせたのか、残念という言葉しか思い浮かびません。


よそ者の勝手な想いであり、街は常に変化していくものです。1年で血液が入れ替わる北京の街に4年半も訪れていなかったら、何もかもが変わって当然。実際にはもう2周目に入っている可能性すらあります。北京はもう私の知っている街ではありません。

もちろん道は覚えています。別に異世界に飛ばされたわけではありません。電子マネーをフル活用してみると、ものすごく便利で、さらに便利にするために、中国の電話番号を持ちたいと思うほど(携帯電話番号がないとそこそこ不便)。

そして何より、新しい血液によりできた新しい出会いがそこにはあります。王府井の屋台で食事ができればなと思っていましたが、それがなかったから、歩いている時に気になったお店に入ったら、かなり自分好みの味で美味しくて満足。


過去をどんどん手放すことになるのが北京。新しい出会いがたくさんあるのも北京。こういうところがたまらなく好きなんです。記憶力がびっくりするほど弱くて、過去を振り返ることができない私にとって、未来しか見ていない街は相性がいいのかもしれません。

ただ、古い北京にも少しだけ触れました。北京魯迅博物館が宿の近くにあり、さらには歴代帝王廟も徒歩圏内。歴代帝王廟は私の最も苦手とする圧迫感のある空間で、久しぶりに息苦しさを感じました。こういうスポットが思わぬところにあるのが北京。

やっぱり楽しいですね。今の北京を見ていない人は、人生をほんの少しだけ損しています。ほんの少しだけですよ。中国に興味がない人だと、これっぽっちも損をしないかもしれません。でも、時間をとってきてよかったなと思います。すべての経験が非日常。それだけでワクワクするじゃないですか。

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