マラソン大会が定員割れする理由はひとつではない:2極化するマラソン大会

おそらく横浜マラソンが定員割れとなります。そして北海道マラソンもこのままだと定員割れすることになるでしょう。これを「マラソンブームが去ったから」と片付けるのは簡単ですが、実際にはもう少し根深い問題のように感じています。なぜなら、この状況でも定員を軽く超えるマラソン大会があるからです。

もちろんマラソン大会に出場するランナーの数は減っています。総数が減っているので当然のことながら定員割れする大会も出てきます。ただ「マラソンブームが去ったから仕方ない」とする前に、マラソン大会の運営が本当に仕方ないことなのかを考える必要があります。

この状況で定員割れするのは、マラソンブームが去ったからではありません。そのマラソン大会に魅力が足りていないからです。ただ「魅力」という言葉だけで片付けるのも、マラソン業界に足を突っ込んでいる立場の人間としては傲慢とも言えます。


魅力というのはとても便利な言葉ですが、本質的ではありません。もう少し具体的に言語化していこうと思います。たとえば横浜マラソンですが、こちらは参加費と大会の面白さを走りたくなる理由が釣り合っていないことが、定員割れの理由として考えられます。

横浜マラソンは受益者負担を基本としているマラソン大会で、参加者がマラソン大会にかかる費用を可能な限り負担するスタンスですので、フルマラソンの参加費が18,500円もします。コロナ禍前のウルトラマラソンよりも高額で、それに見合う「エントリーする理由」がありません。

首都圏から日帰りで参加できますが、同じく秋に開催される水戸黄門漫遊マラソンの参加費は9,000円です。9,500円も多く払って走る理由があるのか。確かに港町横浜は走っていて気持ちいいのですが、一方でみなとみらいエリアを除くと、見どころがほとんどありません。むしろ首都高を走るというところがかなり不評です。


北海道マラソンは昨年の酷暑による精神的ダメージが大きいのだと思います。リベンジを掲げている人もいますが、2度とあんな思いをしたくないというのが大半のランナーの総意なのでしょう。そして、驚くほど高い北海道の宿泊費用も影響しています。

1泊1.2万円があたり前で、後泊したら宿泊費だけで2.4万円かかります。遠方からの参加の場合、これに交通費がかかりますし、美味しいものを食べるとなると夕食なら1食5,000円コースです。以前のように北海道を満喫できる大会ではなくなっています。

ホテルの高さは横浜マラソンも同じで、もうマラソン遠征を気軽にできるような状況ではなくなっています。このため、マラソン大会は地元のランナーを大事にする方針に切り替える必要があるのですが、経済効果を狙うからどうしても県外からの参加者を呼び込みたくなる。でも、それはもう無理なんです。


この状況でも定員割れを起こしていないどころか、落選発表で盛り上がる大会もあります。東京マラソンや福岡マラソンがそれに該当します。東京マラソンは経済効果が大きいことから、本格的なプロジェクトになっているのも強みですが、軌道修正の速さが強みだと私は感じています。

たとえば、今年の東京マラソンはかなりの人数の外国人ランナーを受け入れました。グローバル化という名目かもしれませんが、日本国内の枠を絞ることで倍率の高さを維持し、海外ランナーを受け入れることで、ワールドワイドなマラソン大会へと進化することを目的としているのでしょう。

福岡マラソンはとにかくランナーファーストを具現化しており、多くのファンを抱えています。東京マラソンを真似ることができる大会は限られていますが、福岡マラソンは多くのマラソン大会が参考にできます。こういうマラソン大会があることが数少ない希望ではあります。ただ、これからさらにマラソン大会は2極化していくのでしょう。

少なくともマラソンブームの終焉を定員割れの理由だと判断している運営がある限り。

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