映画「グレートウォール」を娯楽として楽しめない生き方

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万里の長城マラソンの前に、映画「グレートウォール」を観てきました。いい映画だったら参加者におすすめしようかと思ったので。

結論から言えば、わたし好みの映画ではありませんでした。

そもそも映画が3Dでの上映がほとんどだった時点で、ちょっと怪しげな雰囲気がありました。そのうえ、時間の都合で、TOHOシネマズのMX4Dという最新技術を使った映画です。

3Dの映画を観ることも初めてで、そのうえ振動などを体感できるというMX4D。映画の世界はわたしが知らない間にとてつもなく進化していたようです。

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その技術に感心したものの、映画の内容に関しては大きな疑問符がつきました。

もちろんそれはわたしの主観であり、映画に対して詳しいわけではありません。「得るものが何もない」これがわたしの純粋な評価です。

レイトショーで、MX4Dの割増料金と3Dメガネを合わせて2700円。わたしにはそれだけの価値を見出すことはできませんでした。

ただ、例えば遊園地やテーマパークが好きな人なら十分に楽しめる気がします。娯楽を純粋に楽しむことができる。「グレートウォール」はそういう人たちのための映画なのでしょう。

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映画というものには2つの側面があります。ひとつは観終わってスッキリ出来る娯楽性のある映画と、もうひとつがどうしても伝えたいメッセージが込められた映画です。

わたしは自分の人生に娯楽は不要だと思っていますし、毎日の仕事もランニングもエキサイティングに楽しめています。ですので、遊園地やテーマパークに行きたいという気持ちがかなり薄いかもしれません。

かわいい女の子に誘われたら、それは心躍らせて行きますが、それは遊園地やテーマパークが楽しみなわけではなく、ただ、その人と一緒にいる時間が楽しいだけで、行く場所なんてどこでもいいわけです。

それはともかく、例えば1日家でゴロゴロしているということなんて絶対にありませんし、スキあらば仕事をしますし、走りに行きます。わたしにとっての仕事やランニングが、娯楽映画という人が世の中にはいるわけです。

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だとすると「グレートウォール」をMX4Dで観るという経験は、十分に2700円の価値はあります。

とはいえ、設定がおかしすぎるところが多々あり、中国の歴史を少しかじっている程度のわたしですら「それはおかしい」と感じる点がいくつもあります。「小さいことはどうでもいいんだよ、楽しめれば」そういう気持ちがないと、いちいち詰まってしまいます。

それでも中国人が美しく描かれていることは、ちょっとした満足感があります。日本人の美徳というのは、誤解がありながらも、なんとなく世界に広まっていきました。

その一方で、中国人への評価が低い時代が長い間続いてきました。行儀は悪く自分勝手で声が大きい。そういうイメージを中国人に持っている人が多いかもしれませんが、この映画では中国人の本来持つ美徳が十分に描かれています。

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こういうことの積み重ねで、国際社会での中国人への評価が上がっていきます。

いまこの映画が上映されているということは、アメリカと中国が力を合わせていく方向性を示しています。中国人の美しさを発信することで、徐々に人々の意識というものが変わっていきます。

映画というのは娯楽という一面を持ちながらも、印象操作のようなこともできてしまいます。

それは何も映画に限ったことではありません。日本のテレビでも「これはいかがなものか」というような発言を何度も何度も繰り返していると、それを見ていた人はあたかもそれが自分の発言、自分の思いのように刷り込まれます。

中国に対していいイメージを持ってもらいたい。アメリカ政府と中国政府のそんな思惑が伝わってきます。

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そのことは個人的にはとても喜ばしいことです。ただただ映画の力、メディアの力ってすごいなと思うだけのことで、それ以上でもそれ以下でもありません。

ただ、どうせお金を払って観るなら、もっと身になるものが良かったなという印象は拭えません。

娯楽という意味では、わたしの大好きな小説もしょせんは娯楽です。ただ、いまわたしが読んでいる、吉川英治さんの「私本太平記」は無料で読むことができ、なおかつかれこれ、もう2ヶ月くらい読み続けてまだ終わりません。

コストパフォーマンスの高さはもちろんのこと、その中で描かれている足利尊氏や楠木正成に心躍らせながら、ページをめくることができます(電子書籍ですからめくりませんが)。そしてそこから学ぶことが無数にあります。

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結局のところわたしは、自分のしたことで何かを得られないと満足できないだけなのかもしれません。

映画も好きですが、純粋な娯楽映画というのはわたしの生き方からしてもミスマッチで、心から楽しむことが難しいのだということを実感しました。

わたしはそういう生き方でも充実しているように思えますが、人によっては「そんな人生面白いの?」と感じることでしょう。難しく考えずに楽しめばいいじゃないかと。

それもいいかもしれませんが、難しく考えることをやめたら、わたしはわたしでいられません。こんな小難しいブログ記事もかけなくなるでしょう。自分に合っているものを取捨選択する。それも人生です。

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とりあえず、自分が満足できなかったので、映画「グレートウォール」を周りの人や、万里の長城マラソンに参加する人に勧めることはやめました。わたしは本心からいいと思えたものしか勧められません。

アクション映画でスカッとしたい。そういう人にはおそらく向いています。わたしがそうでないだけです。

ちょっと大味な映画ばかり続いてしまったので、今度はどっかの小さな映画館で、じんわり来るような映画を観たいところです。少なくともMX4Dはもういいかな。


無趣味のすすめ
著者:村上龍
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