青春映画が好きだということは、このブログでも何度も言っていますが、青春小説も好きなのは言うまでもないかとは思います。わたしの中では「小説>映画」ですから。
わたし史上最高の青春小説は「がんばっていきまっしょい」。これを上回る小説はこれからも出てこないような気がします。でも1冊ではなくシリーズ物で考えたら、誉田哲也さんの武士道シリーズのほうが好きかもしれません。
前作の武士道エイティーンは不覚にも涙したような記憶があります。
そんな武士道シリーズの完結作「武士道ジェネレーション」をようやく手にすることになりました。単行本が発売されたのが2015年7月ですので、3年以上もかかりました。
会社を辞める直前で、ハードカバーの本を買えるほど家計に余裕がなかったというのもありますが、読んでしまうと好きだったシリーズが終わってしまうと思うと「今じゃない」という思いに支配され。
その結果、このタイミングで手にしたわけですが、その理由はわかりません。
本というのはいつだって、必要なときに手元にやってきます。人生の本当に必要なときに、まるで昔からそこにいたかのように寄り添ってくれます。1冊だってタイミング違いでやってきた本はありません。
だから、わたしは人から勧められた本でも、今じゃないと思ったら読みません。もともと何でも勧められるというのが好きではないというのもあるのですが。勧めるのは好きなので、完全に自己中なめんどくさいやつですが。
それはともかく「武士道ジェネレーション」。発売から3年も経過していたらネタバレも何もあったものではないのですが、これから読むという人がいないとは限りませんので、ネタバレにならない程度にいろいろと感想を。
この物語は、高校時代を切磋琢磨しながら成長してきた2人の剣道少女の物語の、その後を描いたものです。人によっては蛇足と感じるかもしれませんが、わたしが読み終えた感想としては刀が鞘に収まったという感覚です。
剣道一筋で向かうところ敵なしの香織と、その香織に勝ってしまったことでおかしな関係が始まってしまったお気楽少女の早苗。武士道シックスティーンは映画にもなったので、なんとなく覚えている人もいるかも知れません。
そして、早苗が転校してしまったことで、2人の距離が変わってしまった「武士道セブンティーン」。「武士道セブンティーン」のその後を描いた「武士道エイティーン」。
こう書くと武士道ジェネレーションは蛇足の蛇足のようになってしまいますが、わたしにとっては最初の2作が序章であり、このシリーズの魅力は「武士道エイティーン」と「武士道ジェネレーション」にあります。
それはきっと、青い春のその後の時代を生きているからなのでしょう。
武士道シックスティーンが発売されたのが2009年ですので、当時のわたしは青春の残り香の中にいました。当時34歳、ずいぶんと長く続く香りでしたが、男はいつまでも過去を引きずる生き物(わたしだけ?)。
全然話が進みません。こんな読書感想文を小学生の時に提出したら、確実に再提出を求められたでしょう。
武士道ジェネレーションは、いきなり早苗の結婚式から話が始まります。2人が高校を卒業し、大学生になり、そして社会人になっていく過程で起きた、香織の通う道場の後継ぎ問題。
前作からかなり時間を開けての読み始めでしたので、「あれ?こんな感じでしたっけ?」と違和感がありながらも、ページを捲っていくと、気がつけばやっぱりいつもの定位置。
テンポのいい会話にあっという間に引き込まれ、電車の中で何度声を出して笑ってしまったことか。そうでした、このシリーズは電車で読んではいけないタイプの本でした。
ストーリーの真ん中にあるのは剣道ですが、心のあり方についてはランニングにおいても参考になることが多々あります。もちろん「武士道」に関する話がこのシリーズの鍵になってきます。
自分にとっての武士道とは何なのか。なぜ強くならなくてはいけないのか。
「なぜ生きるのか」に答えはないけれど、「どう生きるのか」は自分なりに答えを出せます。「なぜ走るのか」に答えはないけど、「どう走るのか」は自分なりに答えを出せます。
話を読み続けながら、きっとこの物語は、わたしに進むべき道を決めるべきだと諭しているのではないかと感じるようになりました。まだ「どう走るのか」を決めきれないわたし。腹をくくれないでいる状態に活を入れてくれた1冊。
こうあるべきというのはすでに見えています。「でもな……」とウジウジしているのが今のわたし。
でも、やっと腹を括れそうです。1冊の小説に人生を動かされるなんてどうかしてると思うかもしれませんが、わたしはほんの少しもどうかしてるなんて思いません。
武士道シリーズは、それぐらい心が揺り動かされる小説です。もし自分に子どもがいるなら、読ませたい小説No.1ですし、過去に全力で取り組んだ何かがある人にぜひ読んでもらいたい1冊です。
そして過去に全力だった時代のある人に、まっすぐだった自分を思い出してもらいたい。わたしがそうしたように。
青春時代はいつだってキラキラしているものですが、人生においてはその時代は、そこから長く続く物語の序章に過ぎません。青春のあとをどう生きるかということのほうが遥かに重要です。
武士道ジェネレーションはそんなあたり前のことを気付かさせてくれた、とても大切な1冊になりました。
もし興味があるとい人は、武士道シリーズの第1巻となった「武士道シックスティーン」から読み始めることをおすすめします。
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