映画「君は月夜に光り輝く」〜人生は不可逆的であるということ〜

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年度末の案件が落ち着いたのもあり、昨日は午前中にコタツをしまって、部屋の片付け。映画の日というのもあったので、午後からは海老名で映画「君は月夜に光り輝く」を観てきました。

予告はすでに観ていたので、あぁ泣けるんだろうなと思ってたんですが、やっぱり青春ものが好きだし、そこそこ張り詰めて仕事をしてきたので、別に泣いてもいいかなとも思ったり。

20代の頃は、映画で泣くてなんて思考が単純な人間がすることだと思ってましたが、その頃のわたしは人生経験が足りなさすぎたのでしょう。30代の後半くらいから素直に笑ったり、泣いたりできるようになりました。

ただ、この日の「君は月夜に光り輝く」は、わたしが選んだ映画にしてはめずらしく劇場は満席。春休みというのもあるのかもしれませんが、中学生や高校生の女の子が目立ちました。

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映画って、友だちと行くものなんですね。わたしも、そういう青春の過ごし方をしていたら、また違った人生を歩めていたのかもしれません。でも高校生の恋愛と死との向き合い方がテーマですので、確かに友だちを観るのがいいのかもしれません。

40代にもなって青春映画にしがみついているほうが、どう考えてもおかしいわけで。

ストーリーのあらすじを少しだけ。主人公である岡田卓也が、不治の病である「発光病」にかかった同級生のヒロイン、渡良瀬まみずに、クラスの寄せ書きを送ることから物語が始まります。

まみずは病院から出ることができず、死ぬまでに自分のやりたかったことを、卓也に代行経験してもらいます。そこから2人の関係が進展していきますが、その先の内容は映画を観てください。

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不治の病という段階で、もう泣くための映画ですよ。セカチューを思い出すのは、おっさん世代でしょうか。でもここ最近の邦画は不治の病ブームらしく、テーマそのものに対する批判的な口コミもちらほら。

でもわたしは口コミもを確認しに映画に行くわけではありません。観たいと思ったものを観るだけ。その結果、半分以上の確率で単館ものになっているのは、わたしの美的センスのなさのあらわれか……

「死」をテーマにすると、若い人にはやっぱり伝わりにくいんだろうなという感じがします。若いうちに死ぬことの重さを理解できる人なんてきっとひと握りなんだと思います。

命が途切れるのは漫画の世界か、ドラマや映画の中で起きる悲しいこと。実感が伴わなくて当然です。ほとんどの人にとって親はまだ健在で、大切な人を失った人も限られているでしょう。

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だから悪いというのではなく、きっと若い人とわたしでは感じるものがまた違うんだろうということです。いや、同世代の人でもそれぞれ感じ方が違うとは思いますが、死に触れているかどうかの壁は、かなり大きな違いを生み出します。

逆に言えば、わたしはもう若者たちの世界に戻ることはできないということでもあります。戻りたいかと聞かれると、その返事になかなか困りますが、20年以上の歳月はわたしに大きな変化を与えました。

あの頃のわたしは、誰かを好きになることはあっても、愛するということの意味もわからず、愛が憎しみに変わるということも知りもしませんでした。そんな頃の自分には戻れないわけです。

何を当たり前のことをと思うかもしれませんが、人生が不可逆的であることは誰も教えてくれませんでした。「どんどん失敗して成長しろ」「将来のためにここで踏ん張れ」そういう言葉は嫌というほど聞いてきました。

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「この時間は2度と戻ってこないのだから、今を大切にしなさい」

そう教えてくれる大人は1人もいなかったような気がします。いい大人になることを求められ、日々成長していくことを期待される。でも、わたしたちはみんな、今を生きています。

未来のことなんて知ったことではありません。今を全力で楽しんでないのに未来が明るいわけがない。それがわたしのスタンスです。もちろん異論は認めます。わたしの場合はただ無計画なだけですし。

わたしは過去を振り返ることをほとんどしませんが、ときどき思うことはあります。「もっとできたのではないか」と。サッカーだって、もっと勉強して練習できたのではないか。好きだった子にもっと好きをアピールできたのではないか。

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だから、どうということはありませんが、あの頃は「今を大切」にはしていなかったなと。

「今を生きている」けど「今を大切にしている」わけではありませんでした。過ぎた時間は戻ることはなく、ただ積み重ねていくしかないということを、当時のわたしは知りませんでした。

今が永遠に続くような錯覚があり、それがどれだけ貴重なものだったのか、この歳なってよく分かります。そして、青春映画を観るたびに、戻ってこないあの時代と重ね合わせてしまいます。

「君は月夜に光り輝く」の後半あたりから、感情のコントロールが難しくなりました。ものすごくありがちなストーリーだし、泣くと分かっている映画で泣くなんてかっこ悪いの極地だとは思っても、やっぱり涙が止まらない。

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なんででしょうね。

こういう映画が琴線に触れる年頃なのか、それとも気持ちが弱っているだけなのか。でも、ちょっとすっきりしました。たまには涙腺を開くためだけに映画に行くのもいいもんです。

でも、次に観る映画は悲しくないのがいいかな。こういう心の揺さぶられ方は、自分に酔ってしまいます。感情を開放したいときにはいいかもしれませんが、もう少しじんわりとくる映画のほうがわたし好み。

とりあえず次は、ヒロインが不治の病を患わない映画にします。


君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)
著者:佐野 徹夜
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