悲しくも美しい台湾映画「悲しみより、もっと悲しい物語【比悲傷更悲傷的故事】」

久しぶりに映画館に行ってきました。先日、ウーバーイーツの配達終わりに恵比寿で台湾映画が上映されているのを知り、そこから他にも台湾映画をやっていないか探してみたら、昨日が最終日の「悲しみより、もっと悲しい物語【比悲傷更悲傷的故事】」を発見。

新型コロナウイルスの影響で上映スケジュールが乱れており、すでに上映が終わっている映画館もあれば、本日から上映開始になる映画館もあります。都内では本日からユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で上映。ただ映画を見るのにお台場まで行くのは面倒なので、新宿の武蔵野館へ。

単館映画好きなんですが、実は武蔵野館は初めて。新宿シネマカリテは1度ありますが、そういえば新宿シネマカリテで観たのも台湾映画。それも今回と同じ最終日だったような気がします。土壇場にならないと観に行かない男……

「悲しみより、もっと悲しい物語」は2009年に韓国で大ヒットした映画を、台湾でリメイクした作品です。台湾で上映されたのは2018年。もちろんどちらも知りません……映画はたまに観るのですが、積極的に観ようとはしないので、調べることもないので。

ただ、この日本から出られない閉塞感で、台湾に行きたいモードが全開になり、もう映画でも観てないとやってられないわけです。そんなときに恵比寿で台湾映画が上映されているのを知ったわけですから、これもひとつの縁のようなもの。実際に観たのは別の映画でしたが。

まだ上映が続いているのでネタバレにならない程度に、わたしが撮影した台湾の写真とともに。

ストーリーは2人の男女の関係を描いたもので、白血病で長く生きられないことがわかっているKと、16歳から彼と同棲をしているクリームの2人。Kはクリームのことを愛しているのにも関わらず、いや愛しているから白血病であることをクリームに隠し続けます。

命が限られていることが分かっているから、クリームが幸せに生きるために一線を越えず、彼女のことを愛しているとは絶対に告げません。そんないびつな2人の関係が描かれており、途中から涙腺崩壊でもう涙が止まらない。

できることならもう1回観たい……ただ。もう1回観るなら数日前から水分を補給しておかないと涙で脱水症になってしまう自信があります。

愛の形はいろいろありますが、こういう愛に巡り合うことのなかった自分を喜ぶべきか悲しむべきか。大切な人のために自分を押し殺す。大切な人を誰かに託す。それは想像を遥かに超えた悲しさと苦しみがあり、きっとわたしがこれからの人生で負うことのない葛藤がそこにはあります。

でも、この物語はそれだけで終わりません。「もっと悲しい物語」が続くのですから。この構成がとても好き。強引さもなくスムーズに「もっと悲しい物語」が始まるので最初混乱しましたが、2本の線がつながって1本になったときにこみ上げてくるこの感情。これ以上は書きませんが、いいものを観ました。

非常事態宣言中はほとんど毎日仕事ばかりでしたが、もっと余裕を持ってアマゾンビデオでも観れば良かったかなと。自分を失わないようにするために、しっかり自分で立つために強い自分でいようとしましたが、どこか無理をしていたのも事実で、どこかで泣いたり叫んだりすれば良かったのかなと、いまならそう思えます。

でもやっぱり、こういうのは家で観るのと映画館で観るのは違います。

きっと映画館に行くのもこわいという人もたくさんいるんだと思います。映画館じゃなくて自宅でいいじゃないかという人も。でもわたしの中では映画館で観るのとタブレットで観るのとではまったく違うものです。何が違うのかうまく伝えられませんが。

動画配信が悪いというのではなく、感じるものや得られるものが違う。満たされている感覚が動画配信と映画ではまったく違います。でもこの流れでいくと映画館も縮小していくんだろうなという気はしています。とくに武蔵野館のような一等地にある単館映画を上映する映画館は。

そうなると台湾映画を観る機会も減ってしまいます。それは困るので、微力ながら映画館でお金を払って観ました。もっともわたしの場合は、新型コロナウイルスに対して楽観的な姿勢でいるので、映画館に行くのに抵抗がないだけですが。

このブログでも2月くらいから言い続けましたが、フリーランスのわたしにとってこわいのは感染することよりも経済が沈むこと。美しいものに触れる機会が減ることです。限られた人生の時間の中で大きなロスが生まれることへの恐怖のほうがはるかに大きいと感じています。

もちろんそれはわたしにとっての話で、人によっては「まだ終息してもないのに映画館に行くなんて」と思う人もいるかもしれません。でも、わたしはわたしの人生を生きています。自分を押し殺してでも幸せになってもらいたいと想える人もいません(それはそれで悲しい物語かもしれませんが)。

批判されようとも人生で観ておくべき映画があります。観ておきたい景色だってあります。会っておきたい人がいます。そう思える自分が好きですし、これからも自分の欲求を満たしていこうとは思います。

ただ、ほんの少しだけ期待しています。自分の望むものが「大切な人の幸せ」になる日がくることを。44歳にもなって何を青いことを言っているのだと思うかもしれませんが、わたしも人の子であり、きっと赤い血が流れていますので。

散々涙を流した後に、やっぱり台湾に行きたくなりました(元は韓国映画ですが)。早くあたり前のように台湾や北京に行ける日が戻ってくるのを、ただただ願っています。大切な人が日本人とは限りませんし……となると中国語をきちんと勉強しなくては。

20%くらい聞き取れましたけどね。

いろんな意味で刺激をもらえた映画でした。劇場情報などは公式サイトからチェックできますので、気になった人はぜひ確認してみてください。

「悲しみより、もっと悲しい物語」公式サイト

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