アマゾンプライムビデオで台湾映画「西城童話(西門に降る童話)」を観た

西門のストリート。上空からお金が降ってくるときに見せる李李仁(リー・リーレン)の表情がとても好きだ。その瞬間だけ彼が演じるキング(西門慶)が救われているように見える。途方もない額のお金を手にしても幸せが手に入るわけではなく、お金を手放すことでほんの少しだけ幸せに近づく瞬間。

仕事が思ったよりも早く終わったので、アマゾンプライムビデオで台湾映画「西城童話」を観た。本当は別の映画を映画館で観て帰るつもりだったが、タイミングが悪く観たい映画が上映していなかったので家までもどってきたのだが、気分は映画だったので。

1週間に1回くらいは、そんな日があってもいいかなとは思う。映画館はお金がかかるがアマゾンプライムビデオは追加でお金がかかるわけではない。缶ビール1本だけで楽しめるから、割高な映画館の生ビールを購入せずに済む。何も映画館にこだわることはない。

小説も文庫本になってから買うタイプ。流行りには乗れないが、物語には賞味期限はない。小説も映画も。

台湾映画を選んだのは半分は中国語の勉強のため。たまに聞いていないと聞き取れなくなるので。もっともわたしの語学力は初級レベルでしかないので、忘れたところで大して問題はない。だから勉強のためといいながら、台湾の風景を楽しみたいというのもある。

台湾にある西門。ゲストハウスが多く、若者が集ってくる街。坂と山手線に寄る分断のない渋谷をイメージしてもらえばわかりやすいかもしれない。その西門が台湾映画「西城童話(西門に降る童話)」の舞台になる。母の飲み代と生活費を稼ぐために西門でスタイリストをしている小虎と、西門の変人キングの物語。

台北の地下鉄で結ばれた6つの町を舞台にした「台北メトロシリーズ」第3弾ということらしい。7作あるらしく、残念ながらどれも観たことがない。台北の街歩きが楽しくなりそうなので、アマゾンプライムビデオにある限り観てみようとは思う。

西城童話(西門に降る童話)の評価はあまり高くない。ストーリーが分かりづらいということなのだが、それには同意する。説明を可能な限り削っているように感じる。登場人物それぞれが苦悩を抱えているので、説明しすぎると混乱が起きてしまうから、分かる人だけわかればいいという描き方をする。

すごく微妙な描き方をする。それを読み取れた人は深みを感じることができ、そうでなければ退屈な映画だろう。この映画の重さに関わってくる部分がほんの一瞬だけ表現される。いくつかのレビューを読んだが、それに気づいている人が1人もいない。

どんな物語でも、背景にあるストーリーが変わると見え方がまったく変わってくる。だがその背景がストーリーの後半に判明すると、何を信じていいのかわからなくなり混乱を生み出す。おそらく意図的に行っているのだろう。混沌を作り出すことがこの映画のひとつの目的になっているように感じる。

もちろんわたしの思い込みかもしれない。だが、映画というのは想像力が豊かな方が楽しめるもの。そういう意味では映画デートというのは最悪な組み合わせだということが今ならわかる。それぞれに想像力が違うのだから、同じ映画を観ていても感じるものが違ってくる。でも2人は同じものを観たと思っている。

その後に待っている展開は言うまでもない。もっとも映画デートは映画を観ているのではなく、一緒に同じ空間にいて、いつ手をつなぐのかドキドキするのが楽しいわけで、映画の内容などあまり意味がないのかもしれない(少なくともわたしの場合は)。

話がそれてしまったので戻そう。

西城童話(西門に降る童話)は感動して涙するような話ではない。ストーリーに振り回されて、感情移入するのが難しい。でも面白い映画だった。人間味があるし、好きな街のひとつである西門が舞台。きっと次に西門に行く時には、街で暮らす人たちの姿が違って見えるだろう。

この映画の主役は小虎でもキングでもなく、西門という街なのだ。

これまで足を踏み入れることのなかった路地裏にまで入っていくかもしれない。キングの暮らす廃墟は見つからないだろうが、繁華街としての西門とは違った姿を探して回ることになる。西門で暮らす人たちのリアリティに触れ、また西門のことが好きになる。

たくさんの見落としがあるような気がしてならないから、少なくとももう1回は観ることになるだろう。だが「台北メトロシリーズ」はあと6作品もある。見直すか別のを観るか悩ましい。実は気になる邦画もたくさんあるのだが……アマゾンプライムビデオおそるべし。

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