中山道ランと東京坂道ランを経て、もしかしたら自分は走ることが好きなのかもしれないと感じ始めています。これまで好きじゃなかったのかと聞かれると、正直好きではありませんでした。
練習はとにかく大変ですし、大会に出れば遠征費も掛かります。じゃあ何で走っているのかと聞かれると「走らないと健康を維持できないから」と答えていました。
その答えはこれからも変わることはないと思いますが、それとは別に体が走ることを求めているのを感じます。
ただ、その先にあるのはマラソン大会ではありません。わたしが好きではなかったのはマラソン大会であって、走ることは本質的には好きだったのかもしれません。
むしろ、これまではマラソン大会が好きだと思っていました。世界中にある大会に出て、色んな人とコミュニケーションをとって走ったり、自分の限界を追い求めて全力で走ったりすることに喜びを感じているのだと。
でも、今回の東京坂道ランではっきりしました。わたしは走ることが好きで、走ることによって生まれる驚きや出会いが好きなんだということを。
それと同時に、無知であることは素敵なことだなとも感じています。
何も知らないというのは、たくさんの驚きに出会うことができます。半端に知識があると驚きが半減します。今回東京の坂道を走って、これまでの2回とは比べものにならないくらいの楽しさがあったのですが、そう思えたのはわたしが無知だったからです。
言問橋の近くで食べた言問団子。あんな美味しい団子が世の中にあるなんて驚きでした(お値段もそこそこ驚きでしたが)。東京の人ならみんな知っているのかもしれませんが、わたしは知らなかったので、お店の雰囲気だけで選んだわけです。
そしたら、まさにほっぺたが落ちるという表現がしっくりくる上品な甘さと食感。賞味期限が1日しかないので、お土産には向いていません。だからこれまで口にしたことがなかったのでしょうが、知らないからこその喜びでした。
ランチで行った日暮里の馬賊で食べた担々麺も、笑いが止まらない美味しさでした。でも一番驚いたのは、そこに若い女の人が1人で当たり前のようにやってきて、ラーメンと餃子を頼んでいることでした。
しかも夏っぽい淡い青色のワンピース姿。麦わら帽子でもかぶってたら映画から抜け出してきたのかと思うような可愛げのある女の子まで1人でやってくるわけです。これは偏見かもしれませんが、これが日暮里なんだなと変なところで感心しました。
日暮里という名前は、「日が暮れる里」でちょっと暗いイメージがありました。でも走って知ったのは「ひぐらしの里」だということで、日が暮れるも忘れるくらい楽しい時間を過ごした里ということ。
実際に日暮里や谷中の町を走っていると、ものすごく気の良さを感じます。
わたしはスピチュアルとかは信じていませんし、風水もよく分かりませんが、谷中は東京でも特別な場所だということが分かります。明らかにあの場所だけは、東京の他の場所とは違います。
谷中にお寺が多いというのとは無関係ではないはずです。ちなみに谷中は関東大震災でも第二次世界大戦でも被害が少なかった場所だそうです。おそらく隣接する根津や千駄木も似たような雰囲気があると思います。
東京に住むのであればここだなと思いながら走っていました。
谷根千という名前くらいは聞いたことがありましたが、実際に自分の足で走ってみてその魅力を感じることができたわけです。こういう出会いがあるから町ランや旅ランは止められません。
フルマラソンのレースではこういう経験はできません。決められたコースを決められた時間内に完走する。そこに出会いがないとはいいませんが、走っているランナーの多くが自分のことで精一杯。
町ランや旅ランは好きなところで曲がっていいわけです。好きなところで休憩していいわけです。それでも1日30kmは進めるわけです。夏でなければ50kmは走れます。
50km走れば、そこはもう驚きの連続ですが、長く走ればいいものでもないかなと思い始めています。10時間走って50kmというのは旅ランとしては標準ですが、東京坂道ランのようなランの場合には明らかにオーバーペースです。
気になったところにどんどん入っていけば、1日20kmくらいになってもいいはずです。わたしが好きなのはそういうランニングです。
わたしは競い合うのが好きではありませんし、闘争心もありません。レースのやトレーニングにおけるタイムというのは、今の自分を知るための指標でしかなく、決して目指すべき目標ではありません。
そう考えると、きっとこれからわたしはマラソン大会にはあまり行かなくなる気がします。鹿児島マラソンは今回エントリーしましたが、おそらくこれが最後です。新潟も松江もきっとリピートしません。
愛媛マラソンとハルカススカイラン、あるなら夢の島24時間と宮ヶ瀬湖24時間。それに台湾のマラソンとラン仲間と行けるなら天童ラ・フランスマラソンくらいでしょうか。
それすら、5年後に続けているかどうか分かりません。
きっと来年は、週末ごとに街道ラン・東京坂道ラン・裸足練習会をやると思います。大会よりもそういうイベント系ランを主体に走るようになる気がしています。
東京坂道ランもすべての坂を走り終えてからがスタート。おもしろい坂をつなげて、観光をしながら都内を走る。いずれ外国人観光客なども一緒に走れると素敵ですよね。
そこに競争はありません。でも走れる喜びはあります。走ることが目的ではなく、走ることが道具になります。そうなってくると見えてくるものが変わってくるはずです。
というわけで、ランニングとの向き合い方も徐々にシフトチェンジしていきそうな気配を感じています。レースだけじゃないランニングの楽しみ方。そういうものを伝えていけるようになりたい。
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