ランニングでケガをしないための走り方【自分のスタンスを明確にする】

タイトルに期待して、このページにアクセスしてくれた人には申し訳ないのですが、わたしの結論は「そんなものはない」です。

人間の体は1人ひとり違うわけで、骨格も筋肉のつき方も違うのに、「こう走ればケガをしない」という共通の走り方なんてあるわけがありません。でもランナーはランニングフォームを気にします。

フォームを変えれば何かが変わると思っている人にはっきり言いますが、フォームは変えるものではなく変わるものです。少なくともわたしはそうやって、ケガをしにくい走りを身につけてきました。

目次

体は負荷がかからないように走ろうとする

人間には適応力というものがあります。トレイルを走り続ければトレイルに適した走り方が自然と身につきますし、裸足で走れば裸足に適した走りが自然と身につきます。ただし、そうしたスキルが身につくまでに時間がかかります。

この部分を理解していない人が多すぎます。

一般的に人間が1つの動きを習得するのに1万時間かかるとされています。1日3時間で10年です。マラソンでは「走り始めてから10年は記録が伸びる」と言われていますが、10年続けることで完成の域に到達するというこの考え方に一致します。

もちろん、1万時間走り終えた瞬間に0が1になるわけではなく、きちんと右肩上がりに成長はしています。ただそれでも、動作の習得にはとにかく時間がかかります。

感覚で申し訳ないのですが、自分の環境に適応したランニングフォームを習得するまでに、少なくとも1000時間はかかります。1日1時間で3年といったところでしょうか。センスのいい人は、もっと短期間で身につけることができますが、わたしたち庶民は時間を積み重ねるしかありません。

それはいいとして、ランニングフォームというのは自分の体に無理がないように、自然とアジャストします。今の走り方がどんなに不格好であっても、それが自分の体に最適化された走りです。

走りを改善することはできます。例えば体幹を整えるためにインナーマッスルを鍛えれば走りはもっと良くなります。でもそれは「変える」ではなく「変わる」です。インナーマッスルを鍛えれば、走りは自然と変わります。

反対に良くないのは「フォアフットがいい」と言われてフォアフットに変えり、「腕の振り方はこうあるべき」と言われてそれに変えたりすることです。着地方法も腕の振り方も正解はありません。ある人に正解でも、それが自分に正解とは限りません。無理に変えれば、体に無理な負荷がかかりケガをします。

最適化されたフォームでもケガをする理由

残念ながら、最適化されたフォームでもケガはします。いや、むしろ最適化されてるからこそケガをします。なぜなら、そのフォームは積み重ねてきた走りに特化したものになっているからです。

少しわかりにくいので、順を追って説明します。

現在の走り方を身につけるまで、キロ6分ペースで1000時間走り続けたとしましょう。そうするとフルマラソンでサブ4を狙えるレベルに到達します。でも、なかなかサブ4には届きません。そうなると誰かが「スピード練習もしたほうがいい」とアドバイスをくれます。

そこでペース走やインターバルを取り入れて、キロ5分とかで走ってみるわけです。でも、体はキロ6分の走りに適応しているので、キロ5分で走ると筋肉や関節に無理が出ます。キロ6分とキロ5分では関節の可動域も違いますし、速く走ると捻じれも大きくなります。

当然ケガをするわけです。本当はキロ5分のトレーニングができるようになるために、ゆっくりと時間をかけて適応しなくてはいけないのに、なぜか気合と根性だけで乗り切ろうとする。

トレイルに最適化されるとロードのタイムが落ちる。これは理解できる人がたくさんいるのに、キロ6分に最適化されたフォームは、キロ5分で走るのには適していないということを理解できない人がたくさんいるようです。

フルマラソンで友だちのサポートをしたことのあるランナーなら、きっと経験しているはずです。フルマラソンを6時間かけて走るのがいかに大変かということを。

普段はフルマラソンを3時間で走る人なら、6時間かけて走るのなんて簡単だと思われがちですが、その人の体は3時間で走るように最適化されているので、6時間で走るのには適さない体になっているわけです。

最適化された体、最適化されたフォームは走りに安定をもたらしますが、イレギュラーには対応できなくなります。

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ランニングでケガをしないための走り方

やや複雑な話になってしまったので、簡単にまとめておきます。

  • ランニングフォームは環境に自然と適応する
  • ただし適応化に1000時間はかかる
  • 最適化されたフォームがケガを引き起こす

ここからわかるのは、仮にケガをしにくいフォームがあったとしても、それを身につけたことがケガの引き金になるということです。だから、本当にやらなくてはいけないのは、ひとつのフォームに固定するのではなく、その状況ごとに変化できる走りを身につけることです。

具体的には次のようなことが有効です。

  • ロードだけでなくトレイルなどの不整地も走る
  • 様々なペースで走る
  • ランニング以外の競技にも取り組む

ケガをしたくないなら、トレーニングの幅を広げてください。きれいな路面でばかり走るのではなく、トレイルのような不整地を走ることで変化に対して柔軟に対応できる筋肉が身につきます。ラクなペースばかりではなく、ときにはインターバルなどを無理のない範囲でいれて刺激に慣れてください。

そして、自転車でも水泳でもいいですし、球技などでも構わないのでランニング以外の競技を行って、体がランニングだけに特化しないようにしてください。

トップアスリートは命を削っている

ここまでの説明は「ケガをせずに、生涯スポーツとしてランニングを楽しみたい」という人へのアドバイスです。もし、自己ベストを更新してどんどん速く走れるようになりたい、長く走れるようになりたいと思うなら話は変わってきます。

そういう人は、やはり特化した体を作らないといけません。理論的に速く走れるフォームを身に着けなくてはいけません。自分の体に無理をさせてでも、そこに近づける努力が必要になってきます。もちろん、体を壊してしまっては意味がありませんが、彼らは壊れるか壊れないかの瀬戸際まで追い込んでトレーニングを行います。

トップアスリートになるというのはそういうことです。自分の体を削って、自分の命を削って走りを習得しています。その結果、本当に寿命が短くなる人もいますし、引退してからまったく走らなくなる人(走れなくなる人)もいます。

短く太く走りたいのか、長く細く走りたいのか。そのスタンスによってトレーニングのやり方は変わってきます。それなのに、長く細く走りたい人まで、短く太く走る人たちのスタンスでランニングと向き合っているという現実があります。

もっと言えば、走る目的が定まっておらず、ただぼんやりと「いつまでも走り続けたい。でも、少しでも速くなりたい」と相反する2つの考え方を抱えて走り続けているわけです。それはそれでかまいませんが、せめて優先順位はつけておいてください。

「記録を狙うんだから故障は仕方ない」もしくは「故障したくないから記録が伸びないのは仕方ない」どちらのスタンスを選びますか?故障しない走り方を考える前に、まずは自分のスタンスを明確にしてください。

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