ランニングシューズ大好きな裸足ランナーの重松です。冬になって寒いので、夕方練習もシューズを履くことが増えてきましたが、それはそれでちょっと楽しかったりします。わたしにとってシューズは乗り物のようなものだから、ドライブをするような感覚で楽しめます。
実際にランニングシューズは車とよく似ています。動力がガソリンなのか体内のエネルギーなのかの違いがありますが、製品としての方向性はほぼ同じです。
- アッパー:ボディ
- シューレース:シートベルト
- インソール:シート
- アウトソール:タイヤ
- ミッドソール:サスペンション
- スタビライザ:スタビライザ
ざっくりこんな感じでしょうか。人によっては解釈の仕方が違うかもしれませんが、とりあえずわたしはこのように考えています。そこで、ここえではそれぞれのパーツごとの役割について解説していこうと思います。
RUNNING STREET 365のネタにしようかと思いましたが、ちょっと主観が入りすぎているのでこちらで……
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アッパーの役割
ランニングシューズのアッパーは、車でいうところのボディにあたります。雨や風から足を守り、飛んでくる小石なども跳ね除けてくれます。このような足を守ってくれる役割もありますが、あと2つほど別の役割もあります。
- シューズを引き上げる
- 足を拘束する
シューズを引き上げるというのは、シューレースと組み合わせての役割ですので、後ほど詳しく解説します。
気になるのは「足を拘束する」かと思います。これがあるから裸足ランナーはランニングシューズを嫌うのだと思いますが、ランニングシューズがランニングシューズである所以のひとつが、この拘束力にあります。
裸足では足の指が広がるので、着地をするときに安定感があります。その代わりどうしても力が分散してしまいます。足が地面を押す力は裸足もシューズも同じですが、シューズは足を拘束することで、その力を集中させることができます。
ただし、拘束しすぎると爪が黒くなったり、靴ずれができたりするので、自分の足の形に合ったアッパーのシューズを選ぶことが重要になります。
シューレースの役割
ランニングシューズのパーツで、かなり地味な存在のシューレース。でもキロ4分台前半よりも速く走ろうとしたときに、シューレースはとても重要な役割を果たすことになります。
走るときに地面を押した足は、反発力と筋力を使って持ち上げますが、同時にランニングシューズを持ち上げています。このとき、足の甲がアッパーに当たって、ランニングシューズを持ち上げるわけですが、足の甲とアッパーの間に隙間があると、持ち上げるときに足とインソールの間に隙間ができます。
そうなると、ランニングシューズにモーメントがかかり、必要以上の力を使うことになります。モーメントの説明は面倒なのでここでは省きます。簡単にいえば、アッパーとインソールで隙間なく足を挟み込む役割をシューレースが果たしています。
もっと噛み砕いていえば、フィット感を高めるためにシューレースはありますが、おそらく99%のランナーがシューレースの使い方を間違っています。ただ、正しいシューレースの使い方を言葉で説明するのは難しいので、気になる人は直接聞いてもらえればと思います。
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インソール
インソールは車でいえばシートのようなものです。インソールに足を乗せてシートベルトであるシューレースで足を固定します。ただし、ランニングシューズに標準でついているインソールのほとんどが、シートカバー程度の役割しかありません。
本来は足にフィットするような形であるべきですが、人の足の形はそれぞれに違うので、下手にクセをつけてしまうと合わない人が続出するので、基本的にはフラットな1枚のシート、少し手を加えていても土踏まずが少し上がっているくらいでしょうか。
メーカーによっては多少クッション性を持たせていることもありますが、パーツとしてはもっとポテンシャルの高いもので、個人に合わせたカスタマイズできる範囲が広いパーツでもあります。だから、インソール屋という仕事が成立するわけですが。
いずれカーボンプレートの入ったインソールも出るのではと思ってましたが、すでに出ていましたね。ルール的にOKなのかどうかはわかりませんが。
わたしはワークマンのシューズをカスタマイズして遊んでいますが、このインソールはいろいろと可能性があると感じています。インソールひとつでシューズが変化するって面白そうじゃないですか?
アウトソールの役割
アウトソールは車でいえばタイヤにあたり、地面をしっかりとグリップしてくれます。わたしは地面を押す感覚で走ると言っていますが、厳密には真っ直ぐに押せているわけではありません。ある程度は地面を後ろに送り出すような動きも入ってきます。
このときにアウトソールのラバーが地面との摩擦を高めて、パワーロスを減らしてくれます。グリップ力が高いタイヤと同じ考えです。ツルツルにすり減ったタイヤではグリップせずに危険ですが、シューズも同様です。
駅伝モデルなどはシューズの裏にチップをつけていますが、これもしっかりとアスファルトを掴むためにあるものです。ただし、グリップ力が上がるということは、それだけ足に負担がかかります。ですのでヴェイパーフライやアディゼロジャパンなどではチップのないゴム底を使っています。
ただしゴムは重たいので、スピードモデルのシューズの場合には本当に必要な場所だけにしかアウトソールをつけていません。ワークマンのシューズが軽いのは、このアウトソールがないためです。それでも走り方次第で1000kmくらい走れますが、グリップ力がないのでスピードを出すのは苦手です。
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ミッドソールの役割
ミッドソールでわかりやすいのはBOOSTフォームです。着地の衝撃を吸収し、吸収した力を反発力に変える機能があります。通常はEVAと呼ばれる安価な素材を使っていますが、最近はどのメーカーも独自開発を行っています。
ナイキのヴェイパーフライなどの値段が高いのも、zoom-Xと呼ばれるフォーム材の製造コストが高いためで、最新のランニングシューズではとても重要なパーツの一つになっています。
ただし、いくら反発力が高いといっても、押した以上の力が返ってくるわけではありません。そういう意味では、いかにロスを減らすかというパーツであり、この点だけはロスのない裸足のほうが優れていると思っています。裸足はレース中にヘタってしまうこともありますが。
どのメーカーも「衝撃吸収と反発力」をうたい文句にしていますが、本来「100」であるものが110や120になるわけではありません。以前よりも100に近づいたというだけのことなので、あまり過大評価する話でもありません。
スタビライザの役割
おそらくスタビライザが最も理解できないパーツかもしれません。自分のシューズにそんなパーツはないと思っている人もいるかもしれませんが、シューズをひっくり返してみてください。そこにプラスチックの部品があれば、それがスタビライザです。
表に出ているのはスタビライザの1部分で、実際にはシューズ全体にプレートが仕込まれていて、シューズのねじれを防いでいます(シューズによっては中足部のみ)。「名目上は」というか「表向きの役割は」ということなのですが。
実際にランニングシューズの推進力を生み出しているのは、このスタビライザです。このスタビライザが板バネのようになっているので、シューズが反ったりねじれたりしたときに、元に戻ろうとして強い力が生み出されます。
勘のいい人は気づいているかと思いますが、ヴェイパーフライのカーボンプレートもこれと同じ役割を果たしています。ただ「カーボン」という素材を全面に押し出したことで注目度が上がっただけで、これはマーケティングの力といったところでしょうか。
もちろん、ただカーボンを使ったというだけでなく、効果的に使ったことがポイントなのですが、いずれにしても現代のランニングシューズの肝になっているのが、このスタビライザです。
最近はスタビライザのないランニングシューズも増えていますが、いずれにしてもどのシューズも、何らかの方法で反りやねじれを復元させるような構造になっています。その違いを比べてみるのもシューズ選びの楽しみだったりします。
「この構造だとこういう推進力になるのだ」と感じられるようになったら、シューズが乗り物だという感覚がわかってもらえるようになるかと思います。
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まとめ
わたしがランニングシューズ好きなのは、これはひとつのメカのようなものだと感じているためです。それぞれのパーツの機能を高めるために、開発者が日々頭を悩ませて、地道な実験を行っているわけです。
そして「これでいい」と思って市場に出してくるわけですから、1足ごとに物語があります。その物語を感じながら走るというのは、1冊の小説を読むという感覚に近いかもしれません。
ランニングシューズを履くときに、ここでご紹介したパーツを感じながら走ってみてください。これまでとは違った感覚になり、ランニングシューズがどう走ってもらいたがっているのか、その声が聞こえてくるようになります。幻聴かもしれませんが。