北海道マラソンの休止とスポーツ界における市民マラソンの立ち位置

オリンピックのマラソンが札幌開催になったことで、今年の北海道マラソンが休止になりました。いろいろあるのだと思いますが、これは1人のランナーとして、ランニングの情報発信をしている1人として、軽く流してはいけないことと感じています。

その気になれば開催できるのに開催しないという道を選んだ北海道マラソンの事務局。それにはきっと理由があります。どのような理由があるのか、わたしが何を危惧しているのかも含めて、わたしなりの考えをお話ししようかと思います。

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北海道マラソンが休止になる表向きの理由

北海道マラソンが休止になる理由として、大会側は次の2点を挙げています。

  • 運営人員を確保できない
  • 大通り公園の原状回復に時間がかかる

要するに、オリンピックと北海道マラソンの両方なんて、とてもじゃないけど手が回らないということなのでしょう。運営人員が足りないというのは理解できます。ただ、具体的な数字がないので本当かどうかはわかりません。とはいえ、これはもう信じるしかありません。

疑問があるのは原状回復に時間がかかるということですが、8/6〜9しか利用しないのに、なぜ8月末に間に合わないのか。北海道の人はそんなにも仕事が遅いのでしょうか?それとも、陸上競技場なみの施設でも作る気なのでしょうか(誰も望んでいないのに)。

これに関しては、どう考えても苦し紛れの言い訳です。ただ、それを責めたいのではなく、問題はなぜそんな言い訳をしなくてはいけないのかということです。

北海道マラソンの事務局としては、誰も傷つかないように開催できない理由を絞り出したのでしょう。そういう意味では良心があるというか、大会そのものと同じで優しさを感じる対応だとは思います。ただ、その優しさが必ずしも正しい選択とは限りませんが。

北海道マラソンは迷惑な存在という可能性

もしかしたら、北海道マラソンは札幌で暮らす人たちにしてみれば、単純に迷惑なのかもしれません。そう考えると、いろいろしっくりくることもあります。

沿道の声援が暖かい北海道マラソンですが、正直なところ人口に対して応援者の数は決して多くないかなというのがわたしの実感です。アクセスしにくい場所があるにしても、やや少ない気がしていました。

知り合いが出ているから応援する。それくらいの感覚なのでしょう。

もっともマラソン大会は基本的にどこでも迷惑な存在です。道路を止められるから、すぐそこに行くのに遠回りしなくてはいけません。家から車を出すことさえできない人もいます。実際に、昨年の北海道マラソンは応援のために、あちこち走り回りましたが、車の侵入を止められて揉めている場所がいくつかありました。

それも年に1回なら地域の活性化のために協力するにしても、オリンピックで迷惑を被って、さらに北海道マラソンもするとなれば、地元の人たちが理解してくれるわけがありません。明確な利益があるならともかく、降って湧いたオリンピック開催ですから「いい加減にしてくれ」と思う人も一定数います。

オリンピックのマラソンだって男女あります。競歩もあります。普通に考えれば、ただただ迷惑なのでしょう。わたしも含めて、ランナーはこの感覚がだいぶ薄れています。自分がランナーになる前の感覚を忘れて、我が物顔で道路を専有する。別に申し訳なさそうに走る必要はありませんが。

北海道マラソンの予算がオリンピックに使える

基本的には地元の同意を得られないから北海道マラソンを開催しないと決めたのだと思います。本気なら9月開催でも10月開催でもできたはずです。時期をずらして開催しないのは、運営にやる気がないか、デメリットが大きすぎるかのどちらかです。

ただひとつだけ気になるのは、最初から北海道マラソンは開催しないつもりだったのではないかということです。札幌でのオリンピック開催はIOCが独断で決めたことになっていますが、わたしは札幌側の働きかけがあったのではないかと思っています。

積極的な働きかけなのか、政治的な話なのかはわかりません。少なくともIOCから打診があったのでしょう。そうでなければ、あんなに簡単にオリンピックの受け入れなどできません。札幌市長の前のめりな姿勢からは、事前の話があったことは明白です。

その働きかけか打診があったときに、予算をどう確保するかと考えたときに、北海道マラソンの予算を回すという話も出たのでしょう。北海道マラソンの予算がどれくらいなのかはわかりませんが、札幌市の負担だけでも2億〜3億円くらいにはなっているはずです。

それでオリンピックの費用をすべて賄えるわけではないでしょうが、足しにはなります。政治家ならそれくらいのことは考えるでしょう。オリンピックと北海道マラソンの両方に税金を使うというのを市民に納得してもらうのは無理です。

オリンピック開催と北海道マラソンを天秤にかけて、オリンピック開催を選んだ。これが事実なのだと思います。札幌市にしてみれば、北海道マラソンはそれくらい軽い扱いなわけです。強い想いを持って運営しているというよりは、慣例だから続けてる。やめ時が見つからないから続けている。

市民マラソンはマイナースポーツだという事実

日本でこの3ヶ月間「マラソン」はGoogleで何回検索されたと思いますか?マラソンシーズンに入ってるから、かなりの数あると思いますよね。100万回くらいは……なんて思ったかもしれませんが、実際は6万回です。

ランニングの検索件数は4万回で、合わせて10万回です。

では「卓球」の検索回数はどれくらいだと思いますか?マラソンが6万回なら同じかやや少ないくらいだと思うかもしれませんが、実際は16.5万回です。日本ではややマイナースポーツのハンドボールで5万回ですので、マラソンはそれより少し多い程度しか検索されていません。

もちろん、検索数がそのまま人気や競技人口に繋がるわけではありませんが、市場規模としてのひとつの目安にはなります。ランナーは自覚したほうがいいです。マラソンはマイナースポーツだということを。そして、マイナースポーツなのに多くの人の生活に迷惑をかけていることを。

だからといって何かをする必要はありませんが、自覚しているかどうかは大事です。走っているのではなく、走らせてもらっていると思えるかどうか。参加費を払ってるのだからと偉そうにしてたら、今回みたいにオリンピックに押し出されて開催しないという選択をされてしまいます。

マラソンがもっと札幌に根づいていたら、オリンピックを受け入れる条件に「北海道マラソンに影響を出さない」という条件をつけるはずです。「1回くらいやらなくても問題ない」これが世の中の人たちの実際の声です。それは北海道マラソンだけでなく、全国どのマラソン大会も同じです。

まとめ

北海道マラソンが休止になる最大の理由は、札幌市にしてみれば「無理してまでやるものでもない」ということです。これが市民マラソンの現実です。ランナー人口が何千万人もいるみたいな調査結果がありますが、鵜呑みにしてはいけません。

マラソンなんて走ったことのない人の方が圧倒的に多い。職場で周りを見渡せばわかるはずです。そのことを自覚すること、マイナースポーツであることを受け入れて謙虚になること。

そうすることで、少しはマラソン大会も地元の人たちに受け入れてもらえるようになるのではないかと、わたしは考えています。感謝の気持ちを持ってスタートラインに立ち、走り終えたらありがとうございましたと唱える。それくらいでも、みんながすれば何かが変わります。

わたしたちは好きな人や大切な人に嫌われないように、普段から言動に気をつけていますよね。それと同じことをマラソンでもするだけです。もちろん強要はしませんし同意できない人もいると思いますが、嫌われない努力は必要かなと、わたしは考えています。

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