東京マラソンの縮小によって何が起こるのか

わたしの予想は半分外れ、東京マラソンは一般ランナーの部が中止と発表されました(開催を期待した方すみません)。まさか、エリートの部だけ開催するとは思いもしませんでした。費用面で無理がありますし、スポンサーも納得しないかなと思ったのですが、東京マラソンはまさかの1手を打ってきました。

新型コロナウイルスの拡大を防ぐためという理由で一般ランナーは走ることができず、もちろん参加費も返ってきません。いろいろと想いはあっても、これが決定であり、仕方ないことと片付けるしかないのでしょう。ただ「仕方がない」で済ませたら物書きはいりません。

こういうときほど筆を執り、大切なことを伝えなくてはいけません。そこで、今回は一般ランナーの部門が中止となって、何が起きるのかについてお話しようと思います。

目次

一般ランナーの部が中止になってどうなるのか

思うことはいろいろありますが、まずは現状を整理しておきましょう。

一般ランナーの部:中止
エリートランナーの部:実施

東京マラソンそのものは開催されます。エリートランナーの部だけですが。この部分が腑に落ちないというか、すっきりしない部分ですよね。完全に中止なら仕方ないかとなりますが、エリートだから走れるというのはどうでしょう。

オリンピックの選考レースだけは絶対にしたいという思惑が見えますし、エリートだという理由だけで走らせてもらえる人たちがいるのは不公平と感じる人もいるはずです。そして、何よりもエリートランナーたちの心境も複雑でしょう。

4万人のランナーから集めたお金で開催される、200人のための東京マラソン。どんな顔してスタートラインに立てばいいのか。かなりメンタルが強くなければ、そのプレッシャーに耐えられないはずです。もしかしたら辞退するエリートランナーもかなりの数になるかもしれません。

一般ランナーの部:2021年の出走権付与(参加費は別途必要)

次に来年の出走権ですが、今年走れない一般ランナーは出走権が付与されます。ただし、今年の参加費は返ってきませんし、走るためにはもう1度16,200円払わなくてはいけません。今年の参加費が戻ってこないのは、そういう契約なので仕方ありません。

では、来年の参加費はいらないとした中国人ランナーの措置はどうなるのでしょう?

この部分に関しては明確な発表はありませんが、きっと中国人ランナーも他のランナーと同じ扱いになるはずです。それで中国人が納得してくれるかどうかは分かりませんが。もっとも、これは東京マラソン側が有耶無耶にする可能性もあります。しれっと中国人だけ参加費免除にしておいても、1年後にはみんな忘れていますので。

他のマラソン大会はどうなるのか

以前の記事で3つの選考レースが終わったら、他のマラソン大会が中止になるかもしれないとお伝えしましたが、東京マラソンでこのような形になったわけですから、原則としてほぼすべての市民マラソンが中止になるはずです。

びわ湖毎日マラソンはエリートだけの大会ですので開催。名古屋ウィメンズマラソンは東京マラソンに右にならえでエリートだけといったところでしょうか。他の市民マラソンは、中止にせざるを得ない状況です。少なくとも陸連は中止を指示するはずです。

もっとも東京マラソンが縮小なら、もはや日本で行われる大規模なイベントはすべて中止になるはずです。東京マラソン縮小(実質中止)という前例ができたのは大きく、イベント中止に対して誰もが納得せざるを得ません。

仕方がないこと。言葉にするのは簡単ですが、これの意味するところはとてつもなく大きく、そしてわたしたちの生活に大きな影響を与えます。話はマラソンから離れますが、それについても話しておきましょう。

世界と日本の経済が受けるダメージ

今回の新型コロナウイルスによる影響を軽く見ている人、自分には関係ないと思っている人もまだいるようですが、このまま収束しなければ、リーマンショックを遥かに上回る経済損失を生み出します。

マラソン大会やイベントを中止にしたくらいで、拡散が収まる訳がありません。この国では多くの人が公共の交通機関を使っています。満員電車に乗っている人もいるかと思いますが、この満員電車は東京マラソンなんかよりも、新型コロナウイルスの拡散させます。

これを止めるには電車での通勤を禁止するしかありません。でも現実的ではないですよね。すでにかなりの人数がコロナウイルスを保有していると考えるのが当然で、すでに職場の全員が感染している会社だってあるかもしれませんし、これからもその確率は上がっていくだけです。

そうなると会社そのものが機能しなくなります。これは1社2社の話ではありません。電車通勤を禁止してもしなくても、経済がまったく回らなくなります。最初は給料を払えていた会社も、内部留保がなくなればお手上げです。

不安を煽っているわけではなく、そこまで想定しておかなくてはいけない状況にあるということです。東京マラソンが縮小されて安心と思っている人もいるでしょう。でも、本当はそうしなくてはいけない崖っぷちに立っています。日本経済はもちろんのこと、世界経済も。

マラソンの開催がどうこう言っている場合ではありません。日本経済が実質的に詰んでいて、あとは自然に収束するのを待つしかないという状況。収束しなければ、日本という船が沈んでいき、それに連なる他の船も沈んでいきます。

マラソン業界にとって強い逆風になる

偉い人たちは、東京オリンピックの選考レースさえできればいいと思っているのでしょうが、今回の新型コロナウイルスの影響はマラソン業界、ランニング業界において、かなり強い逆風になります。

まず、来年の東京マラソンの参加枠が実質的になくなるので、これからマラソンを始めるという人が減ります。他のマラソン大会もそうですが、「当選したからマラソンを始める」という人がたくさんいます。東京マラソンや他のマラソンが中止になって参加枠が翌年に持ち越しになったら、新しく走り出す人が増えません。

また、今回が初マラソンだった人が1年間モチベーションを維持できるのか。これはかなり難しいと思います。半数くらいは「もういいや」となります。「また16,200円も払えない」という人もいるはずです。そういう人たちは、走るのをやめてしまうでしょう。

そして東京オリンピックのマラソンは札幌で開催されるので、東京の人たちは盛り上がるに盛り上がれません。むしろ、気持ちは完全に冷めています。本来なら、東京でマラソンを見て「自分も走ってみよう」となるはずだったのに、その見込みもなくなります。

勘違いしないで欲しいのですが、わたしは東京マラソンを開催しろと言っているのではなく、このあと起こるであろうことに対して憂鬱になっているだけです。マラソン業界への逆風に対して何も手を打てない無力感。経済が悪化していくのをただ眺めるしかできない現実。

こんなに重たい気持ちになったのは初めてかもしれません。ただ、すべてを諦めるわけにはいきません。自分に何ができるのか、何を希望とすればいいのかはわかりませんが、きっとわたしだからできることもあるはずです。ただ、いま言えるのはひとつだけ。

「思ってるよりも悪い状況にあり、危機感を持ったほうがいい」

この言葉をどう受け止めるかは自由です。わたしは預言者でもなければ、未来が見えるわけでもありません(すでに予想を外しています)。だから無視しても構いません。新型コロナウイルスが自然に収束するだろうと楽観視するのもいいでしょう。でも。現実からは目を背けないようにしてください。

現状はわたしたちが思った以上に悪いのですから。

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