昨年雨で途中中断になった『24時間ゆめリレーin湘南ひらつか』。そのリベンジではないが、裸足ランナーとしてシューズを履いたらいったい自分はどれぐらい走れるのかを知りたくて今年も参戦。お前は大して走れもしない言い訳として裸足で走っているのだろう、なんてひどいことをいう人はいないだろうが、ちゃんと走ってもほどほどにデキる子だと知ってもらうことも必要だ。遅いから裸足で走っているのではなく、速く走りたいから裸足で走っている。どうでもいいようで実はとても大事なことだ。
24時間の部の参加チームが149チーム、個人が男女合わせて65名。どちらも昨年から比べて減っているのは昨年の大雨中断の影響が大きいことは想像に難くない。そして運営のドタバタもあったのが昨年。個人テントに個人エントリー者が半分も入れない状況だったのだから二度と参加したくない大会と言われてもしかたない。最初に得た信頼を失ったあと、再び同じ信頼を得ることは長い時間と努力が必要で、この大会で言えば信頼を取り戻すにはまだ時間が短すぎる。
ただし、改善はしている。今回は細かくは書かないが、とにかく改善はされている。
さて肝心の走りである。今回の目標は100マイル160キロだ。根拠はない。そもそも自己ベストが3年前に出した125キロなのだ(走っている時はずっと131キロだと勘違いしていた)。ただ160キロを目標にペース設定を行った。シューズはもちろんVFF(ビブラムファイブフィンガーズ)。正直に言えば他のシューズも、と考えたが裸足の全日本選手権以降VFF以外のシューズは履いていない。そして誰もが長距離に向かないと言うVFFだが、VFFこそが長距離に向くのとわたしは本気で信じている。
調子が良かったのは10時間経過するまでだろうか。13時スタートに動き始めた時計の針が23時を指したところで脚を完全に使いきってしまった。ここからは脚の回復をはかりながら走ることになる。もっとも24時間マラソンの醍醐味はここから始まる。フルマラソンでいう30キロの壁というやつだろうか。自分の中にあるものを出しきった後どうするか、それを試されるのが24時間マラソンというやつだ。
そこからはもちろんペースはあがらないのだが、可能なかぎりコース上にいなければ距離は伸びない。脚を使いきる前に一度ゲリラ豪雨にあって1時間休憩したのと、睡魔に襲われて30分寝たのが2回。大きな休憩はこれぐらいだ。あとは給食のためにテントに戻っては来たが、長く休むことはほとんどなかった。
応援に来てくれる人たちというのもやっぱり力になる。1人で黙々と走っていたころは声援が力になるなんて信じていなかったが、いまなら声援の重さがわかる。タイミングの都合でほとんど話をできなかった人もいたが、スタート前に偶然会場に来ていた友人もいて、コース上にはいつものラン仲間もいる。心理的にかなり安定した状態で走り続けられた。逆に仲間が1人体調不良で途中棄権し、帰宅となったときの喪失感ときたら…
脚の方は夜中にほとんど走れない状態にまで落ち込んだが、朝方には脚が戻ってきた。あり得ないと思うかもしれないが、24時間マラソンは使いきった脚が戻ってくる。カチカチに硬くなった脚でも痛みに耐えながら前に進んでいると急に走れるようになったりするのだ。ただ、どこかが良くなればどこかが悪くなる。そのあたりから足裏が強烈に痛みはじめた。
平塚総合運動公園のアスファルトはおそろしく硬い。アスファルトフェチを自称する裸足ランナーのわたしはこの公園よりも硬いアスファルトを知らない。シューズを履いた他のランナーもアスファルトの硬さが気になっているようだ。その硬いアスファルトに足裏が耐えられなくなり、痛みはじめた。水で足裏を冷やしてもまったく効果がない。この時点で100マイルははるか遠くに霞む夢。それでもなんとか自己ベストは出したい。
足裏の痛みに耐えられなくなったわたしのとった行動は言うまでもなく「VFFを脱ぐ」だ。そもそも裸足には適していないと判断した平塚総合運動公園でVFFを脱ぐというのは正しい判断かどうかはわからない。かと言って、このままでは一歩も走れなくなる。ダメならばまた履けばいいとシューズを両手に持って残りの1時間半をスタート。すばらしく快適である。もちろんここまで走ったあとなので走り続けられなくなる時間もあるが、VFFを履いているよりもよっぽどました。
わたしはいろんなところで「どれだけ脚を追い込んだあとでも裸足なら走れる」と言い続けてきたが、今回がまさにそれだ。いいペースで距離を伸ばしていく。そして、裸足に気づいた人たちから声援をもらう。その声援を力に変えて前に進む。本当に裸足ランナーでよかったと思う。裸足で走れると走りに幅ができるのだ。
138.4キロ。
160キロには遠く及ばないが自己ベストを10キロ以上更新になる。あと1周走って140キロに乗せておきたかったが、これがいまの実力だろう。そして、これから鍛え方次第でいくらでも伸びると確信のできる自己ベスト更新になった。そういえば小さい頃から何をやるにしても上達に時間がかかる子だった。38歳、まだまだ進化の余地は残されている。
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