これぐらいゆるいわりにきつい大会は他に知っているのはゲレンデ逆走マラソンぐらいだろうか。誰もアップなんてしていない。そのくせ走り出したらとんでもない速さで駆け抜けていく。わたしの出た全日本裸足ラン選手権は昨年から始まり、1年前はまだ全日本にふさわしくない走りをする人も大勢いたのだが、今年は違った。
この大会、わたしは自主的撮影班として走りながら動画撮影をしている。昨年の動画をYouTubeにあげたところ、1年間で1000回を超える再生回数があり、わたしが過去にアップしたどのマラソン動画よりもアクセス数が多い。ならば、わたしの役割は動画でこの大会の楽しさを伝えることにある。自分自身の結果が二の次だ。
とまぁかっこいいことを言いたのだが、正直裸足のトップランナーに勝てる気がしないから逃げているだけだ。あの人たちとまともにやりあえる気がまったくしない。できればトップ10の選手全員、万里の長城マラソンを裸足で走ってもらいたいぐらいだ。万里の長城マラソンの日本事務局が稼げるようになったら優勝者を招待ししようかな。
ただ、速かったのは一部の人たちだけだったのに、今回は驚くことにほとんどの選手が速いのだ。撮影なんかしてたらあっという間に置いていかれた。痛いはずの下り坂も難なく下っていく。今日はまぎれもなく全日本選手権だった。全日本選手権で走ったランナーは全員完走だそうだ。来年関門が厳しくならないことを願いたい。
全日本選手権のメンバーに置いていかれても、わたしには任務があるのだ…いや、あると思っている。10kmや5kmのランナーが同時に走っているので彼らの走りを映像におさめたい。そして最高の動画に仕上げたいのだ。そう思いながらわたしは他のランナーに声をかけ、カメラを回し続けた。いい映像のために強引に登坂を走らせたのはここだけの秘密だ。
この大会の5kmと10kmにはシューズの部もあるので、当然のごとくシューズを履いたランナーも走っている。多くは「いつか裸足で」という思いでビブラムファイブフィンガーズを履いているのだが、普通のランニングシューズのランナーもいる。そういうランナーを撮影していて気づくことがある。
シューズのランナーほど笑顔がない。ただ苦しそうに走っているのだ。逆に裸足ランナーは笑顔MAXだ。カメラを向けるとそれぞれがリアクションしてくれる。走れないようないガレ場になればなるほど笑っている。全日本選手権のトップ数名も笑顔になってくれなかったけど、ようは競技性が高くなればなるほど笑顔は薄れていくのだろう。
この大会は競技性も求めるが、ほとんどのランナーにとっては挑戦であり遊びだ。だから笑顔がなくなることはない。そしてわたしは第1回から出場し続けている。また会場である飯能に戻ってきたくなるのだ。こういう大会は本当に数少ない。絶対になくしてはいけない。ここには走ることの原点がつまっている。
裸足の走り方とかわからなくてもいい。笑顔になりたければここに来ればいい。このトレイルをみんなで5kmでも10kmでも走ってみればいい。完全に笑顔MAXになれる。それだけは保証しよう。
個人的には鍛えなおして、来年は全日本選手権ランナーにふさわしい、一桁の若い番号をもらえるランナーにふさわしい走りを取り戻そう… 撮影はやめないけどね。
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