「遙かなるセントラルパーク」とアマチュアリズムの限界

  • 2016.05.08
  • (更新日:2019.11.13)
  • LIFE
「遙かなるセントラルパーク」とアマチュアリズムの限界

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ラン仲間から紹介された「遙かなるセントラルパーク」を読んでマラソンを走ること、マラソンを運営することについて考えさせられることがいくつもありました。

「遙かなるセントラルパーク」は1931年のアメリカを舞台に、カリフォルニアからニューヨークまでの3000マイルのマラソンレースを描いた小説なのですが、この中で気になったのがアマチュアリズムの考え方です。

アマチュアリズムはオリンピックの創始者でもあるクーベルタンの思想で「オリンピックにの出場者は、スポーツによる金銭的な報酬を受けるべきではない」という言葉が元になっています。

わたしが子どもの頃はまだオリンピックはアマチュアスポーツ選手の祭典でした。

野球は社会人野球の選手しかオリンピックに出ることはできませんでしたし、ボクシングはいまでもプロアマの区分けがはっきりしています。

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わたしは「遙かなるセントパーク」を読むまではアマチュアというのは、プロスポーツ選手ではないという意味だと思っていたのですが、このプロアマの考え方はわたしが思っていたよりも遥かに複雑でした。

賭けの対象としてのマラソンや陸上競技。それだけではなくありとあらゆる競技が賭けの対象になり、その競技に出る人がプロスポーツ選手として競技によって収入を得ていました。

プロのスポーツ選手は「勝つこと」が生きていきために求められるため、スポーツマンシップなんてものはありません。きれいごとを並べても勝てなければパンのひとつも買えません。

オリンピックはそうしたプロのスポーツ選手を排除しました。

いまではプロスポーツは賭けの対象になっています。いやアマチュアスポーツであっても賭けの対象になったりします。ただし薬物の問題を省けばプロスポーツ選手は「何をしても勝てばいい」時代ではなくなりつつあります。

もちろんプロのスポーツ選手は勝つことで稼いでいますので、競技への取り組む姿勢やハングリーさが違います。そこに観客は熱狂し、そしてその競技にのめり込んでいくのです。

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日本というのは不思議な国で、プロスポーツが賭けの対象になっているのはサッカーと競馬ぐらいでしょうか。だからではありませんが、プロスポーツが圧倒的に少ない国でもあります。

企業が母体の実業団チームがいまだに陸上界の中心にありますし、少なくとも陸上の世界ではアマチュアリズムをいまだに尊重する風潮があります。

ですから有森裕子さんがプロ宣言したときはかなり大きな問題と話題になりました。

そして今日、オリンピック代表選手選考競技会となっている「セイコーゴールデングランプリ陸上2016」を観戦して感じたことは、アマチュアリズムには魅力が少ないということです。

「セイコーゴールデングランプリ陸上2016」は特にオリンピックの選考競技会のため、競い合いではなく派遣設定記録を上回ることだけに各選手が集中します。

選手同士の駆け引きがほとんどありません。

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他の選手に勝っても、派遣設定記録を上回らなければオリンピックには出られないのですから。

それはもう仕方のないことですが、観客にしてみれば派遣設定記録を上回るかどうかというのは確かに興味がありますし、ハラハラしますが、選手がオリンピックに出ようが出まいが正直どっちでもいいわけです。

もちろん、派遣設定記録を上回って出る人がいると単純に嬉しくなりますが、記録に届かなくても観客であるわたしたちの生活が何か大きく変わるわけではありません。言い方は悪いですが、所詮他人事なのです。

多少のハラハラはありますが退屈です。

わたしの個人的な感覚ですが、スター選手の集まった男子の100mを除いて、この日最も等々力競技場を沸かせたのはハイジャンプ、走り高跳びの中国人2選手でした。

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彼らにはオリンピックの選考は関係ありません。日本人選手に比べて伸び伸び競技を行っていたのもありますが、真面目で熱い男「王宇」とひょうきんな「張国偉」の2名の競い合いは魅せる陸上競技を体現したものでした。

やっぱり観客は「競い合い」を望んでいます。

日本人の陸上選手に「プロ」を望むのはきっと無理があるのでしょう。実業団のアマチュアリズムに縛られ、そのレールに乗る以外に陸上で食べていく方法がありません。

でもこのままアマチュアリズムを突き進んでも行き詰まりしか感じられません。

日本でプロ陸上選手が年間を通じて競い合うペナントレースのようなものは・・・できないのはわかっています。でも正直ちょっともったいないなとは思います。

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勝利しても手に入るものは名誉だけではその競技に魅力を感じることもできず、競技人口は先細っていくばかりです。誰よりも速く走れるなら、オリンピックに出るよりはプロサッカー選手になって海外移籍を狙うほうがよっぽど夢がありますから。

アマチュアリズムを否定するつもりはありませんが、「プロだからいけない」「アマチュアは高潔である」という思い込みを捨てて、陸上の魅力である「競い合い」をもっと活性化させれば、この国の陸上界はもっと発展するはずです。

賞金レース・・・RUNNING STREET 365で検討する価値はありそうです。実はすでに競技の案はできています。あとは「遙かなるセントラルパーク」のフラガナンにわたしがなれるかどうか。

いまはまだ妄想の域を超えませんが、競い合いや駆け引きを楽しむランニング競技をそう遠くない未来に提案する予定です。

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