丁寧に作られたものを口にする喜びと食いしん坊あるということ

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わたしは食いしん坊です。間違っても食通ではありませんし、グルメな人でもありません。美味しいもごはんが大好きで、美味しいお酒が大好きなだけです。

ですので、美味しい料理を作れる人はそれだけで尊敬に値しますし、美味しいお店を教えてくれる人は、わたしにとっては神様仏様よりも偉い人です。

反対に外食をするときに、絶望的に美味しくない料理を作る人や、ごはんを上手に炊かない人には、憎しみすら感じます。一般人で料理が下手というのは、人間それぞれ個性がありますのでいいのですが、料理人として美味しくない料理を出すのはその感覚を疑います。 

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先日入ったお店で、ごはんの炊き方があまりにもひどかったので、本当にお店を出ようかと思いました。お米を研いで決まった水分量でボタンを押すだけ。ただそれだけが出来ないのはどういうことでしょう。

すみません…少し取り乱しました。

でもそれくらい、食べ物に対する思い入れはあります。料理の良し悪しは分かりませんが、丁寧に作られているかどうかは分かります。そしてわたしはそういう料理を食べるのが好きです。

高級食材や高級料理というのもたまに食べるのにはいいのですが、それよりも普段食べるものは、料理をする人が丁寧にを作っているかどうか。そこが一番気になります。

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きっとそれは、小さな頃の食生活が影響しているのでしょう。美味しかったかどうかは別として、母は常に自分で作ったものを食卓に並べました。スーパーのお惣菜が出てくることはまずなく、外食も年に数回です。

丁寧に作られたものだけを食べて育った結果、そういうものを自然と好むようになったのでしょう。

美味しいかどうかは別としてというのは、どうしても苦手なものがいくつかあったからです。美味しいなんていうのは結局主観的な感覚で、誰にでも美味しいものは世の中にはありません。

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わたしは吉野家の牛丼も好きですし、マクドナルドに行くこともあります。グルメな人たちは、きっとそういうお店で食べることはないのでしょう。ただ、牛丼でもマクドナルドでも丁寧さがない場合はイラッとします。

そんなものどこでも味は同じだろうと思うかもしれませんが、同じ牛丼でも丁寧に盛られたものと、雑に盛られたものでは明らかに味が違います。そこに腕の差はないのに、ただ「美味しく食べてもらいたい」という気持ちがあるかないかで、変わってくるわけです。

堀北真希さんが「美味しくな〜れ」と料理に魔法をかけるCMがありましたが、あながちあれも無意味なものとは思っていません。誰かに美味しいものを食べてもらいたいという気持ちは、間違いなく最高の調味料になります。

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バカバカしいと思うかどうかは人それぞれですが、自分で料理をする人は思い当たる節があるのではないでしょうか。自分だけのための作るときよりも誰かのために作るときのほうが美味しく出来た経験があると思います。

こんなわたしでもそういう経験があります。あまりに美味しくできて「美味しいなぁ」を言い過ぎた結果、「それじゃあ私の料理が美味しくないみたいじゃない」と怒って帰られたのは若さ故の過ち。

食いしん坊で良かったなと思うのは、どこに行っても美味しいお店が感覚的に分かるということです。お店の外観を見れば美味しいかどうか大体わかります。

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正確には「自分に合うお店かどうか」ですね。繰り返しになりますが、美味しいは主観であって、人によって違いますので。

ただ、この美味しいお店を見つけるのを人前にやりすぎると「あいつに付いていけば美味しいものが食べられる」となるわけですが、正直これはかなりのプレッシャーです。期待値が高いため余程美味しいお店に連れて行かないと満足してもらえません。

そもそも美味しいと確信を持てるお店が見つからない時もあります。それでも「美味しい」と言ってもらえるとやっぱり嬉しいですし、いい仕事をしたと思えます。 

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でもよくよく考えると本当に贅沢なことをしているなとは思います。美味しいお店を探し歩いていると、人間のとても卑しい部分をひけらかしているようで、嫌な気分になるときもあります。

そうは言っても一生で食べられる量は限りがあるわけで、1食だって無駄にしたくないわけです。いつも笑顔で「美味しい」と言っていたいわけです。卑しいと言われようが、わたしはそこに喜びを感じます。

結婚することも恋人を作ることも考えていませんが、「どんな人が理想?」と聞かれたら「食いしん坊でお酒が好きな人」と今なら答えるような気がします。それくらい食べることと飲むことを大切にしています。

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どんなに大変なことがあっても、美味しいものを口にすれば自然と笑みがこぼれます。どんなに悲しいことがあっても、美味しいお酒を飲めば悲しみさえも肴にできます。

わたしは偉くなりたくもないし、高貴な人になるつもりもありません。ただ丁寧に作られた目の前の料理を噛み締めながら「美味しいなぁ」としみじみ言える自分でありたい。わたしにとって生きるとはきっとそういうこと。


ツレヅレハナコの食いしん坊な台所
著者:ツレヅレハナコ
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