毎月第2第4金曜日にランレコード練習会として、品川を拠点にランニングを行っています。ただ走るだけでなく、品川区や港区の史跡や階段、坂道などをめぐりますが、先日は品川七福神を目指して、旧東海道沿いを走ってきました。
そのとき疑問に感じたのは「七福神とは何なのか」ということです。日本人のほとんどがその存在を知っていますが、七福神がどういう神様なのか語れる人はほとんどいないという現実。これってちょっともったいないと思い、いい機会だから調べてみることにしました。
そこで得た知識をベースにして、難しい話にならないように七福神をアイドルグループっぽく解説していきます。
七福神の由来
天照大御神、伊邪那岐神、須佐之男と日本の歴史に残る神道の流れと、文殊菩薩や弥勒菩薩、釈迦といった仏教の流れ。この2つの流れは格式があり、きちんとした後ろ盾があります。でも、七福神というのは七福神協会があるわけでもなく、組合があるわけでもありません。
後ほどお話しますが、七福神の中には神様もいれば仏様もいて、実に節操のない集団だったりします。なぜそんなことが起きているのかというと、七福神は民間の信仰だったからです。
昔は神様も仏様も同じようなもので、明治時代に神仏分離が行われるまでは、お寺と神社が同じ敷地内にあることも珍しくなく、どちらも別け隔てなくうやまわれてきました。そして、多数いる神様と仏様の中で人気が高かったメンバーが七福神となりました。
はじまりは台所の神様として、比叡山でヒンドゥー教の神様である大黒を祀ったことにあり、それが民間に広がっていきます。ところがソロデビューしたはずの大黒は、日本の神様である恵比寿とコンビを組むことになります。そして、さらに新メンバーとして毘沙門天が加わり、3つの神様がトリオを結成します。
これが平安時代のことで、鎌倉時代まで大黒・恵比寿・毘沙門天の3人組アイドルとして確固たる地位を築いていきます。ところが、平安時代の末期くらいから、新メンバーとして紅一点の弁財天(弁才天)が加入します。ここで4人組になるかと思いきや、なぜか弁財天は毘沙門天のポジションに入ります。
ある地域では大黒・恵比寿・毘沙門天で活動し、ある地域では大黒・恵比寿・弁財天で活動します。いわゆる選抜制と呼ばれるものです。大黒・恵比寿の2大エースは選抜から外れることはありませんが、毘沙門天と弁財天はどちらかがアンダーに落ちてしまいます。
そんな時代は鎌倉時代で終わり、室町時代になると3期生として中国の福禄寿と寿老人、布袋が加わります。そして、現在の七福神の形になりますが、実はこれで終わりではなく、週刊誌によって福禄寿と寿老人に同一人物説がスクープされ、寿老人の代わりに吉祥天、お多福がメンバーとして加わることもありました。
そもそも3期生が加入したのは、室町時代に流行した『竹林七賢図』をモチーフに7人組にするためです。そうなってくると、福禄寿と寿老人を同一人物とするなら、もう1人加えないといけません。最終的には福禄寿と寿老人は別の神様とされたため、その名残で七福神+1人で8福神を祀っている地域もあります。
特定のプロデューサーがいるわけではなく、民意で決められてきたのでこのような複雑な由来を持っているのが七福神の面白いところです。
七福神のプロフィール
七福神の由来がわかったところで、次に七福神のプロフィールをご紹介します。すでにお伝えしましたように、七福神は国際色豊かなアイドルグリープです。それぞれが、どこの神様でどのようなご利益があるのか見ていきましょう。
大黒「絶対的エース」
大黒は「大黒様」「大黒天」とも呼ばれ、実はヒンドゥー教の主神であるシヴァ神が仏教界で活動するときの別名でもあります。少し複雑なことに、この大黒が大国に通じるといこともあって、日本では「大黒=大国主命」とされます。これにより、何重にも役割を背負わされた形になります。
おそらく多くのプレッシャーがあるなか、笑顔を絶やさない姿もあって、民間では圧倒的な人気を誇る絶対的エースとして七福神を引っ張っています。特徴はその笑顔と打ち出の小槌、そして足元には豊穣の象徴である米俵があります。
ご利益:五穀豊穣・家産増進・子孫繁栄
恵比寿「関西で圧倒的な人気」
大黒とともに七福神グループを引っ張ってきたのが恵比寿です。恵比寿は日本の神様で、イザナギとイザナミの子である蛭子命もしくは、大国主の子である事代主神が恵比寿だとされています。あまりにも歴史がありすぎて、もはや誰なのかわからないという……
大国主の子なら、大黒と恵比寿は親子ユニットということになります。
恵比寿は手に持った釣り竿と鯛からもわかるように、海の神、漁業神として信仰されてきましたが、平安時代に市場の神様としても祀られるようになり、商売繁盛の神様として、商人の町・大阪を中心に圧倒的な人気を誇るようになっています。
ご利益:大漁豊作・商売繁盛
毘沙門天「万人に愛される福の神」
七福神唯一の武闘派なのが毘沙門天です。江戸時代以降は勝負ごとに利益のある神様として親しまれますが、そもそも七福神に加わったのは福の神としての信仰が厚かったためです。仏教でも守り神として知られ、厄除け効果よって福をもたらすと信じられています。
毘沙門天はインドの神様で、仏教では多聞天として四天王の一人という地位にあります。仏教を守るための神様で、戦国時代には多くの武将が信仰しており、特に上杉謙信の信仰が厚かったことで有名です。勝運を授けてくれる福の神として、現在でも万人に愛される存在でもあります。
ご利益:厄除け・財運・大願成就・武運長久
弁財天(弁才天)「正統派アイドル」
弁財天も大黒と同じくヒンドゥー教の神様で、七福神の紅一点として人気があります。弁天様と呼ばれることもあり、財福の神様として信仰されています。もともとは「弁才天」でしたが、財福の神様ということで「弁財天」となったとも言われています。
七福神としては琵琶を持っていることも多く、芸達者で美しさと知性を兼ね備えています。2.5期生として毘沙門天からやや遅れてグループに加入しますが、万能型の正統派アイドルとして七福神の中でも根強い人気があります。
ご利益:金運・財運開運・技芸上達・縁結び・学業成就
福禄寿「愛嬌のあるビジュアルで心をつかむ」
3期生として加入した福禄寿は、南極星の化身として、中国の民間で人気の高い神様です。子どもと財に恵まれ、健康で長生きするという3つの願いを具現化した神様で、中国では福星・禄星・寿星それぞれの神様が一体になった存在として進行されています。
長い頭と長いひげがチャームポイントで、健康で長生きをしたいという願いをもったファン(信者)から圧倒的な支持を得る存在です。ただ、七福神の中ではあまり目立たない存在でもあります。
ご利益:子孫繁栄・富貴繁栄・健康長寿
寿老人「福禄寿とは同一人物?謎多き3期生」
寿老人は福禄寿と同じく、南極星の化身として進行されている、中国道教の神様です。福禄寿と同一人物説がありますが、中国では別々の神様として信仰されてきたこともあり、日本でも同様に別々の神様として七福神に加わっています。
ご利益が福禄寿と重なっていることもあり、ビジュアルもほぼ同じなので見分けがつかないということもあって、人気が福禄寿と二分されています。それでも健康長寿を願う人たちから根強い信仰があります。
ご利益:知恵授け・家庭円満・健康長寿
布袋「オールマイティの次世代エース」
布袋も福禄寿や寿老人と同じ中国出身ですが、七福神の中で唯一の実在した人物として親しまれています。予知能力があり弥勒菩薩の化身とされていましたが、存在そのものが人々に幸福感を与えたため、後に神様の1人として信仰されるようになります。
布袋がいればすべてがうまくいくということで、3期生として遅れて七福神に加入してきたにも関わらず、オールマイティの神様として厚く信仰されています。
ご利益:開運・子宝・良縁・夫婦円満・商売繁盛
まとめ
わかりやすくするために、七福神をアイドルグループとして説明しましたが、七福神に対して、これまで以上に理解して親しみを感じてもらえたのではないでしょうか。ちょっと歪んだ知識になるかもしれませんが、これを知ってから七福神めぐりをすると、これまでとは違った感じで参拝できるかと思います。
日本全国にあり、七福神を巡ってランニングするとちょうどいい距離になっているので、ランナーの方はぜひお近くの七福神を走って巡ってみてください。もちろんランナーでない方も1日かけて、散策してみてはいかがでしょう。