美しい景色を見たいという欲と美しい映像を残したいという欲

この写真を撮る瞬間に、私はこの風景をデジタルなファインダー越しにしか見ていないという事実

伊豆の宿でお手伝いする任務の特別編として与えられたのが、富戸港で行われた進水式の映像を撮るということ。結果的には宿の仕事が終わってから向かったので、会場に到着したときには餅まき直前になってしまいましたが。

それでも餅まきや漁船が出港する様子を撮影できたのですが、最近このような撮影をするときに、その風景を目に焼き付けたいという思いがありつつも、その風景を映像として残したいという欲が入り交じることがあります。

そうなるときに大抵は依頼されての撮影ですので、もちろん撮影を優先するのですが、ファインダーやディスプレイを眺めているのは味気ない感じがするわけです。でも撮影したくないかというと、もちろんそんなわけもなく。

私の目に焼き付けるよりも映像という形にしたほうが、たくさんの人がそれを見れるわけです。もっともそれだってディスプレイで見るわけですが。自分の中にあるちょっとした矛盾。別にどうということはないのですが。

いつも言っていることですが、何であれ相反する2つを手にすることはできません。何かを手にしたければ何かを手にしない決断をしなくてはいけない。それが少しだけ以前よりも苦手になってきたような気がします。歳をとったからでしょうか。

若い頃は即断即決をしていたのですが、なんか最近は「まぁいいかどっちでも」みたいなところがあり、決めるということを避けてきたり。一方で、迷わなくなったというのもあります。最初から2択にならないというケース。

これこそ歳をとったからできることだと思うのですが、0か1かで迷うのではなく最初から「1」を選ぶといった感じで、これはまぁ自分らしさの延長にあるものなので、自分としては予想できた未来なので別に意外性もなく驚くこともありません。

迷ったり選ばなかったりすることが増えたというのが自分としては意外。もやもやは溜め込まないタイプだったのですが、もやもやさえも「まぁそれでいいか」と思えたり。1日は24時間しかないので、すべてに白黒つけることが無理ですしね。

でも、20代後半は何にだって答えを求めたし、いつも旗色は決まっていました。やっぱり歳を重ねたことが影響しているのかもしれません。そう考えると、歳をとるというのもそう悪いことではないように思えます。むしろ歳をとって経験を積み重ねたい。

どうあがいても20代の自分が40代の自分に勝てない。そういう歳のとり方をしたいものです。少なくとも現時点ではそれは順調にできており、体力的にも20代よりも今のほうが優れていますし、感性だってよくなっているし、人付き合いも上手くなりました。

それが本当にいいことなのかはわかりませんが、着実に変化しているのはちょっとうれしいものです。もしかしたらそれを世の中では老化と呼ぶのかもしれませんが、老化だったとしても歳をとっているのは事実ですから構いません。

着実に終わりに向かっていると意識することで、時間をムダにしないようにという感覚も生まれますしね。限られた時間の中で何を選んで、何を選ばないか。もしくは何を手放すのか。あとどれくらい生きれば何も選ばない自分になれるのか。死ぬまで迷ってそうではありますけどね。

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