人に何かを説明するとき、「この人にわたしの言っていることが伝わっていないかもしれない」と思いながら話すのはコミュニケーションの基本だと思っていたのだが、そうでもない人のほうが多いのかもしれないと最近感じている。
想像力が足りていない、もしくは考えが浅いのか。そういう言い方をすると誤解されるよと言いたくなるような話し方をする人も少数派ではないし、そもそも何かを伝える意思すら感じない人もいる。
自分の言いたいことだけを言って、相手がわかってくれているつもりになっている人。そういう人は「良い大学」を出て「良い会社」で働いている人に多い。いや、はっきり言えばそういう人たちの多くがそうだ。
そこからさらに天才的な頭脳を持つ人たちは、「この人にわたしの言っていることが伝わっていないかもしれない」という感覚で話していることが多い。小さなころから自分の言っていることが周りに伝わっていない経験を繰り返してきたのかもしれない。天才の苦悩ってやつだろうか。
わたしは自分がどうしてそういう考え方をするようになったかはわからないが、社会人になってからは意識してそういう話し方をしている。高校や大学時代はもっと思いつきで話しをしていたような気がする。
それは、高校や大学は同じぐらいの学力を持った人が集まっているからで、思考回路もわりと近かったからかもしれない。それぞれ個性があったとはいえ、狭い範囲の個性でしかなかったのだろう。
社会にでるといろんな人がいる。頭の回転がおそろしく速い人もいれば、飲み込むまでに時間がかかる人もいる。考えるよりも動くほうが速いという人もいれば、とことんまで考えぬく人もいる。
だから自分の当たり前が他人の当たり前でないことが大前提になる。そう考えれば「この人にわたしの言っていることが伝わっていないかもしれない」となるのだと思うのだが、なぜ多くの人がそうならないのだろう。
話す相手のことを想い、相手の立場で物事を考える。ビジネスの、いや人間関係の基本中の基本だろう。相手が何を望んでいるか、考えに考え抜いて話したり行動したりする。
村上龍さん風に言えば「危機感の欠如」とでも表現すべきか。「相手に伝わっていないかもしれない」と考えられない人は危機感が足りていない。
根拠もなく「わかってくれるだろう」なんて考えてはいけない。あなたの言葉の90%以上は相手に伝わっていない。
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