万里の長城マラソンPV撮影4日目。
自分の家に娘と息子を送り届けた、代表の朱さんが北京に戻ってくるはずだった。ところが、中国南部で猛威を振るった台風の影響で、北京へのフライトも電車も確保できず。
この日は、秋大会の会場となる慕田峪長城まで連れて行ってもらえるはずだったが、わたしはコースの下見もしたいという思いから、自力で向かうことに。
慕田峪長城は北京市街地から70㎞くらい離れた場所にある。実は昨年の秋大会のゴールとなった場所。ただし、そのときは何も分からずに、万里の長城を目にすることもないまま戻ってきた。
今回は自力で行かなくてはならないため、それなりに下調べ。
北京から直行便もあるということだが、本数が少ない。一般的なルートは東直門から916路快バスに乗って、懐柔北大街で下車。そこからタクシーと交渉して長城に向かうということらしい。
懐柔北大街では白タクも含め、かなりの客引きがあるというところが、引っ掛かったが行かないという選択肢はない。
直行便も頭に入れて東直門に向かったのだが、乗り場がわからない。916路快バスは本数が多いということもあって、すぐに見つかります。本数も多く確実に座ることも可能。というより、高速道路を走るため座席数以上は乗せない。
同じバスには万里の長城に向かう白人グループもいて、「ここに付いていけば大丈夫」と思ったのだが、なぜかそのグループは、懐柔北大街よりも手前のバス停で客引きに連れ去られる。
どうやら、懐柔北大街以外にもタクシーが待機している場所がいくつかあるらしい。
懐柔北大街は慕田峪長城行きのバスに乗り換えができる場所ということで、多くの観光客に利用されているだけ。とりあえずわたしは懐柔北大街で下車。50㎞くらい移動したが6元(約100円)しか掛かっていない。
北京はバスも地下鉄も値上げしているが、それでもバスは激安。
さて問題のタクシーとの交渉。わたしは中国語会話ができない。ただし、相手は乗せたい。こちらは乗りたい。希望する価格をお互いに言い合えばいい。
「100元でどうだ?」
「そんなもの払えんわ、50元で行ってよ」
「じゃあ70元ならどう?」
「 OK」
数十秒で交渉成立。
事前のリサーチでは、1人しかいない場合は70元(約1120円)くらいかかるとのこと。交渉というよりは、お互いに落としどころを知っているから、まったく問題なくタクシーを確保できた。
人数が多ければもっと安い値段で行ける。運転手が1往復で140元くらいは稼ぎたいということなのだろう。
到着した場所は、慕田峪長城の入り口。ここからシャトルバスに乗って、万里の長城の麓まで向かうことになる。麓から長城まで徒歩で行くつもりだったが、タクシーの運転手が「絶対やめておけ」と強く言う。リフトで行くべきだと。
あまりにも強く勧めるので渋々190元くらいを支払う。正確な値段は覚えていないが、ネットの情報よりも少し高めになっている。
この入り口部分には、いくつものお店があるのだが、驚くような観光地価格ということでまったく興味がない。そもそもわたしには時間がない。食事をする約束があり、夕方までに北京市街地に戻っている必要がある。
そういう意味ではリフトに乗るのは懸命な選択だろう。
その気になればシャトルバスも使わず、リフトも使わないで長城まで行けるのだがタイムイズマネーだ。あっという間に長城に到着した。
そこからはもう、そこからの景色にただただ呆れるしかない。
春大会の八達嶺古長城も悪くはないのだが、ここからの景色はまた違った凄みがある。空気が澄んでいたというのもあるのだが、かなり遠くにある長城まで視界に飛び込んでくる。
写真で慕田峪長城を見たときに「ここは走りやすいかもしれない」そう思ったのだが、実際に軽く走ってみてわかったことがある。
楽に走れる万里の長城なんてどこにもない。
小さなアップダウンが続き走れる場所は多いのだが、やはり筋肉を使わずには走れない。急激な上り階段もあるため、歩くだけでもそこそこきつい。ただ。そんな階段でも一番上まで行き、後ろを振り返ると、ため息の出る景色がそこにある。
公式的には端から端まで3㎞しかない。秋大会32㎞の長城と10㎞のトレイルコースということなので、おそらくリフト乗り場がスタート地点で、そこから長城まで上がるのだろう。長城は5往復といったところだろうか。
コースの特徴は分かったが、行き止まりから先までみんな進んでいる。
言うまでもなくわたしも、さらに先へと向かうことに。その先にあったのはほとんど整備されていない、ほぼ廃墟状態の長城。人が歩いているため、なんとか道はあるのだが、万里の長城を歩いているというよりは、完全にトレイル。
だが、さらにずっと先まで人が入っている。
こうなったら行けるところまで進もうと腹をくくって、危険を感じるような坂道を上がっていく。最も高い場所まで進んだのだが、どうやらまだ先にも行けるらしい。
ただし、ここでわたしはタイムアップ。撮影もしなくてはいけないし、夕方までに戻らなくてはいけない。後ろ髪を引かれる思いで、リフト乗り場まで戻ることにした。
戻りはリフトではなくスライダーを使う(残念ながら写真はない)。
実はこのスライダーをかなり楽しみにしていた。超巨大な滑り台をスライダーで滑り降りるわけだが、こういうのは日本ではなかなか見かけない。安全とか言い始めると、絶対に許可が出ない。
爽快な気分で一気に降りる。
それを期待したのだが、残念ながら3人前のおっちゃんがかなりのビビリで、あっという間に渋滞の先頭になってしまった。そうなるともう、面白さはまったくない。
慕田峪長城に行ったら、絶対にスライダーに乗ってもらいのだが、混雑している時間にはあまりおすすめできない。
無事撮影も終えて、あとは懐柔北大街まで戻るだけ。ここでも交渉が必要かもしれないと思ったのだが、運良く白タクのおっちゃんがいて、中国人家族との相乗りを提案してくれた。
値段はなんと15元。最初聞き間違えかと思ったのだが、聞き直したらはっきりと「15」と言う。やっぱり人数が多いほうがお得に来れる。戻りだから足元見られて100元くらいはかかるのを覚悟していたのだが、拍子抜け。
正直、ここまでうまく行くというのは、かなり幸運なほうだと思う。ただ、今回の旅はいつも以上に自分が中国に馴染んているのを感じられたことを考えると、幸運が勝手にやってきたのではなく、少しは自分で引き寄せたのだろう。
わからないことに対して物怖じせずにきちんと向き合うことで、相手もしっかりこちらを見てくれる。少なくとも北京はもうわたしにとっての特別ではなく、限りなく日常に近い存在。
もう一歩踏み込んで中国を楽しめる。そういう段階がやってきたのかもしれない。
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