東京オリンピック2020のマラソンが札幌開催に決まりましたが、決まったあともIOCがいろいろと口を出してきて、何をしてもうまくいかない流れです。
その中で、マラソンの開催日が閉会式と同じ日になっているので開催日をずらして、選手が閉会式に出られるようにという提案がありました。ところがIOCは「レースが終わってからでも間に合う」とはねつけました。
そうなってくると、本当に間に合うのか気になるわけです。ネットではいろいろと意見が出ていますが、きちんとシミュレーションした人はあまりいないので、せっかくなら波に乗っておこうかと。
男子マラソンは8月9日に開催
まずは現状確認することから始めましょう。
開催日:2020年8月9日(日)
マラソンスタート予想時間:6時
閉会式開始時間:20時
14時間もあるから十分に間に合いそうです。ただ、マラソンには時間がかかりますし、移動時間も考えてシミュレーションしなくては意味がありません。まずは前提としてこのようになっていると覚えておいてください。
北海道は緯度が高いので、午前5時でも十分に明るいのでもしかしたら、スタート時間は変わるかもしれません。ただそれを言い出すと、本当に札幌でできるのかという問題も出てくるので、ここでは6時スタートということで。
オリンピックのマラソンはトップアスリートが集まりますが、すべての選手がエリートランナーというわけではありません。リオオリンピックの猫ひろしさんは2時間45分55秒もかけて完走しています。それよりも遅い選手もいます。
ロンドンオリンピックの最終ランナーTsepo MATHIBELLEは、2時間55分54秒でゴールしていますので、ざっくり3時間はかかると考えましょう。このため競技終了時間は9時となります。
この時点でタイムリミットは11時間。さてマラソン選手は20時までにナショナルスタジアムに到着できるのでしょうか。
大通公園からナショナルスタジアムまでの移動時間
次におそらくゴール地点になる大通り公園からナショナルスタジアムまでの移動について計算してみましょう。マラソンランナーなので、とりあえず歩いてもらうことにしてみます。
徒歩&フェリーで移動したら153時間
歩くと931kmで153時間もかかります。フェリーをOKにしているのに。でもオリンピアンなので走ればもっと早く到着する可能性はあります。42kmを2時間のペースで走るとすると……22時間。
残念ながら間に合いません。
当然の結果ですが、話のネタとして覚えておくにはいいでしょう。ネットで札幌から東京まで走ればいいなんて書いている人もいたので、こういう検証もしておいたほうがいいかと。
陸路なら9時間
北海道といえば北海道新幹線があるじゃないですか。飛行機だと転機の影響で飛ばない可能性もあるので、まずは陸路で移動できるのかも見ておきましょう。こういうときにGoogle Mapはとても便利です。
なんと9時間17分で到着できるとなっています。
時間帯にもよるかもしれませんが、10時間あれば間違いなく到着できます。転校の影響を受けにくいという意味では、飛行機が飛ばなかったときの予備のルートとして使えそうです。もしかしたらIOCはGoogle Mapで検索したのでしょうか。
悪ふざけのつもりだったのですが、確実性という意味では悪くありません。
飛行機を使えば5時間で移動できる
真面目な話をしましょう。
いくらなんでも9時間もオリンピアンを陸路で移動させるわけにはいきません。車内で宴会が始まり、半分以上の選手が酔いつぶれてしまいます。もっとも酔いつぶれて起きてもまだ移動中なのですが。
あたり前のルートで計算してみましょう。大通公園から新千歳空港に向かって飛行機で羽田空港へ。このルートで一般人が移動した場合、11時に出発して16時にはナショナルスタジアムに到着します。
しかもまだ予約可能です(そういう問題ではない)。
実際には大通公園から新千歳空港まで、羽田空港からナショナルスタジアムまではバスを使うはずです。その気になれば警察が先導して、優先的に信号をコントロールすることもできます。
フライト時間が1時間40分程度ですので、4時間程度で到着することも可能ですが、まともに計算しても5時間しかかかりません。11時間の余裕があって移動時間が5時間ですので、新千歳空港の新千歳空港温泉で汗を流すこともできますし、札幌でせんべろしても間に合います。
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選手の疲労を考慮するとアスリートファーストではない
物理的に札幌から東京まで、閉会式に間に合うように移動することは可能です。あと問題になるのは選手の疲労です。移動できないほどに疲労するかというと実はそうでもありません。
市民ランナーが遠征する場合、日曜日のマラソンを走ってすぐに空港に向かうなんてことは日常茶飯事です。トップランナーでも。ゴール後に立てなくなるなんてことはまずありません。
川内優輝選手はオールアウトするので、ゴール直後に倒れることで有名ですが、彼はどんなレースでも、そのあとにクールダウンのジョグを行います。倒れたところまでしかテレビでは放送されませんが、落ち着いたら走れるわけです。
大迫選手も「ゴール後に倒れるのは意味がわからない」というニュアンスのことを言っていました。2時間切りを達成したキプチョゲ選手は、ゴール後に飛び跳ねて喜んでいました。
彼らにとってフルマラソンは、簡単ではないけど移動できなくなるほどになるものではありません。むしろ、そんな選手はオリンピック出場することはできません。むしろ1晩寝てしまったほうが、体は動かなくなります。
とはいえ、フルマラソンを走った後に閉会式に移動というのは、アスリートファーストの考え方ではありません。そもそも札幌で開催するというのは「アスリートファースト」という名目がありました。
でもレースを走った日に、札幌を満喫することなく東京に戻るわけです。本当なら2〜3日札幌に滞在して、地元の人と交流する写真がSNSなどにあがって「札幌で開催してよかった」となるのが理想。大通公園のビアガーデンで、選手が地元の人に混ざって打ち上げしてるって想像しただけで愉快です。
金メダリストと乾杯したとかって一生の思い出になります。
だから、本当は閉会式の3日前くらいに開催して欲しいところ。もちろん、観光や宴会のためだけでなく、体のケアをする時間が必要だという意味でも。
札幌に残る選手もいることを期待
レースの前は選手はかなり節制します。ケガをしないために観光は避けるでしょうし、ドーピングの問題があるので食事も安全なものしか絶対に口にしません。そうなると、選手は札幌を満喫することなく帰国するわけです。
札幌は道を貸しただけです。場合によってはお金もいくらかは持ち出しになるはずです。オリンピックの精神としてそれで本当によいのでしょうか。
ラグビーのワールドカップが盛り上がったのには、選手と地元の人との交流があったというのも大きく、ボランティアを行った選手などはかなりメディアで取り上げられて、ラグビーそのものの印象がよくなりました。
選手が走ってすぐに帰って札幌には何も残さない。もったいないなとは思います。そんな盛り上がりよりも、日曜日開催で放映料がたっぷり入ってくるほうがIOCにとっては重要なのでしょう。
とりあえず、移動そのものは無理ではないということはわかりました。あとは選手がそれぞれに判断することだと思います。閉会式に必ず出なくてはいけない理由もありませんから。
閉会式よりも大事なことがあると言って、札幌に残ってくれる選手もいるはずだと期待しましょう。もしそういう選手がいて、お店などで見かけたら、ビールの1杯くらいは奢ってあげてください。