東京マラソンは開催できるのか

東京マラソンがエリートだけで開催するとか、そんなつもりはないとかメディアのネタになっている。今年のマラソン大会の中止が相次いだのも東京マラソンがきっかけになったことを考えると、東京マラソンから再開というのが理想だが、当然そう簡単な話ではない。

日本陸連がマラソン大会再開に向けてのガイダンスを発表したことで、新型コロナウイルスが終息しないことには、数万人規模の大会は開催できそうにない。開催するにはガイダンスの撤回が必要になるし、陸連がそうするとは思えない。

陸連はおそらく東京マラソンを開催したいのだろうが、自分で出したガイダンスがあるし、何かあったときの責任は取りたくない。だから今年と同じようにエリートだけで開催したいという思いはあるのだろうが、来年の大会をエリートだけでするという大義がない。

今年はオリンピックに向けての選考レースだったという背景があるので、開催する理由はあった。来年も一部のエリートのために東京の道路を封鎖してまで開催する理由があるのか。エリートだけで開催するなら伊豆大島や八丈島といった離島を活用すればいい(島民にはいい迷惑かもしれないが)。

沿道での応援も最小限に減らすことができるし、伊豆大島や八丈島の注目度も上がって観光客が増えるだろう。アップダウンが激しいので、日本記録の更新は無理だろうが、過酷な環境でトップランナーがどう戦うかという見どころがある。

それはわたしの願望でしかないが、東京マラソンをエリートだけで開催し、東京の道を止めるというのはかなり難しい。トップランナーだけなので、封鎖時間を短くできるというメリットはあるが、そもそも東京マラソンは小出監督が市民ランナーに銀座を走らせたいという想いから誕生している。

エリートだけが走るための大会ではない。今年は判断する時間もなかったし、あの状況での正解など誰にもわからないのだからまだいいだろう。でも来年はそうもいかない。筋を通すなら市民マラソンとしての開催が必須だろう。エリートだけが走るのは考えられない。

だが、その考えられないような選択をするのが人間の面白さだ。ありえないとは言えない。ただ筋は通らないし、市民ランナーにそっぽ向かれることになるだろう。東京マラソンがエリートだけになって、湘南国際マラソンは市民マラソンとして開催できたら陸連の沽券に関わる。

大人の事情というのもある。いろいろと考えるとエリートも一般も中止になるというのが可能性としては最も高いだろう。結局のところ誰も責任を取りたくない。アシックスだってスポンサーの費用を出せるかどうかも怪しい。だが、再開してランニング業界が盛り上がらないと、いつまで経ってもランニングシューズは売れない。

誰かが「私が責任を持つ」と言えばいいのだが、そもそも「責任」の定義がないので責任を持つことも、責任を取ることもできない。だから、立場ある人たちはすべてを先送りにしたいだろう。東京都は税金を使うことになるから、余計に判断が難しい。

では、わたしたち市民ランナーはどう考えればいいのか。

これは開催されないつもりでいるのが賢明だろう。一般の部が開催されても規模は小さくなる。5,000人くらいがいいところではないだろうか。もしくはウェーブスタートを駆使して1.5万人。これでエントリーが始まったとすると、今年の出場権を失った人たちが優先されるので、当然一般枠などあってないようなもの。

百歩譲って一般枠の募集があったとしても、いざ開催日が近づいてきたタイミングでまた新型コロナウイルスが広まったら、また一般の部が中止になる可能性もある。今年のように参加費が返ってこないとしたらどうだろう?申し込みが始まってみないとわからないが、そのリスクも忘れてはいけない。

世の中はまだ混沌としていて、半年後がどうなるかなんて誰にもわからない。開催されたらいいなと思うのは自由だし、そこに向けてトレーニングをするのもいいだろう。仮にエントリーが始まっても、必ず開催できるわけではない。

開催に向けてのハードルがあまりにも高く、開催できても今年の出走権を持っていない市民ランナーがスタートラインに立てる可能性は限りなくゼロに近い。

どんな形であれ東京マラソンが開催されることで、冷え切ったマラソン業界が少しは盛り上がるだろうから、個人的には開催されたほうがいいとは思う。だが、東京マラソンに限らず、マラソン大会の開催をランナーでない人が快く思わないという問題もある。

これらの問題を解決し市民ランナーがスタートラインに立てるのか。そろそろ決着がつくだろう。どのような結果になるかはわからないが、マラソンの未来にポジティブな内容が含まれた発表になることを願っている。

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