湘南工科大学駅伝部

箱根駅伝の予選会に母校である湘南工科大学が出場していた。レースそのものは見ていないが、ビリ争いをするのかと思ったら46校中38位で、そこまで悪いタイムでもなく(10位から1時間16分遅れと争えるタイムでもないが)、大学が本気なのが伝わってくる。

10位 専修大学 10時間33分59秒(平均1時間3分24秒)
38位 湘南工科大学 11時間50分07秒(平均1時間11分)

本戦に出場するには、1人あたり約7分30秒もハーフマラソンのタイムを縮める必要がある。単純に考えると厳しい戦いになるが、若者は伸び代が大きいので、これからどうなるかは誰にもわからない。1年後は無理でも5年計画くらいで考えたなら、必ずしも無理だとはならないのが大学駅伝。

わたしが在学中に駅伝部はなかったので、学生を集めるための施策のひとつなのだろう。まさか「風が強く吹いている」のように、学生主体ということはないだろう。母校を軽んじるつもりはないが、そんな気概のある学生が通うような大学ではない。偏差値が40以下の大学というのはそういうものだ。

正直、これだけの少子化が進む中で、よく経営が成り立っているなと思う。偏差値だけで考えれば、1番最初になくなってもおかしくない大学だ。資金力だけでいえば、糸山英太郎さんが理事なのでどこよりも余裕があるかもしれないが。母校がなくなるといろいろ困るので、どんな理由であれ残っているのはありがたいこと。

湘南工科大学駅伝部について少し調べてみた。

特別強化部ということで2018年4月に創設されている。寮生活をするということなので、箱根駅伝常連校と変わらない環境にある。さらに工学系の大学らしく、科学的なアプローチもしている。2018年に創設なら、今のところ4年生がいないチーム。来年の新入部員によって層が厚くなれば、さらに上位は狙える。

もし本戦に出場するとなると湘南工科大学の名前が知れ渡ることになる。どんな広告を出すよりも効果的で、さらに箱根駅伝では大学近くの道路を通過するので、自然と本戦では注目度が高まる。箱根駅伝は大学の生き残りをかけた挑戦なのかもしれない。

もちろん、お金をかければ出場できるほど箱根駅伝は甘くない。本戦出場を狙う大学はどこもスカウトから力を入れており、レベルの高い選手は青山学院大学や駒沢大学、東洋大学、東海大学などの常連校を選ぶ。だから、箱根駅伝で名を挙げようという大学は、開花していない才能を見つけなくてはいけない。

箱根駅伝というのは学生のものではあるが、すでに純粋な競技ではなく、エンターテインメントでありビジネスでもある。勝てそうなチームには、スポーツブランドがスポンサーになり、ウェアやシューズを提供するし、他のランニングアイテムも同様だ。良い悪いの話ではなく、それが現実でいまさら純粋な競技には戻れない。

学生にとっては人生がかかっている。ここで実業団の目に止まれば、走って食べていくという道を選ぶことができる。その道は安泰ではないが、才能と努力の積み重ねでオリンピックに出場するチャンスも巡ってくるだろう。実業団から声がかからなければ、実質的に引退になる。

大学生にとっての箱根駅伝は、高校野球における甲子園に近いものがある。箱根駅伝で活躍するために関東の大学に進学し、そこでライバルたちと切磋琢磨しながら自分を磨いていく。大きく羽ばたく者もいれば、ケガが重なって夢が両手からこぼれ落ちていく者もいる

結果はともかく、学生時代に何かに夢中になるというのはいいことだとは思う。少なくともわたしは、学生時代にほとんど遊ぶことなくサッカーと勉強、そしてアルバイトの繰り返しだった。周りの友人が遊んでいても、それを羨ましいと思うこともない。たまに息抜きで友人と遊ぶことくらいはあったが。

湘南工科大学駅伝部の学生は、おそらく走ることと勉強だけの日々。だが、学問と駅伝の科学的アプローチがうまくリンクしていれば、かなり充実した学生生活になる。就職をするときにももちろん有利になる。理系の高校生で筑波大学などに入れる学力がないなら、湘南工科大学というのは魅力的な進学先のひとつになるはずだ。

わたしもサッカーと工学をうまくリンクさせることができれば、また違った未来があったのかもしれない。だが当時はそんなこと考えもせず、学問は学問、サッカーはサッカーと完全に切り離して考えていた。ただどちらも全力で取り組んでいたし、そのスタンスは今の自分の原点にある。

いずれにしても湘南工科大学駅伝部は面白い挑戦だと思う。大学としても学生としても。わたしが関わることはないだろうが、気にはしておくとしよう。わたしもランニングに関する仕事をしているのだから、きっとどこかで交わることもある。それが5年後が10年後かはわからないが、その日が来るのを楽しみにしている。

湘南工科大学駅伝部:https://ekiden.shonan-it.ac.jp
Twitter:https://twitter.com/ShonanIT_Ekiden

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