子どもの頃に体育の授業で長距離を無理に走らされて、走るのが嫌いになったけど、大人になってからランニングを始めたら、思った以上に走るのが楽しくてハマったという人がたくさんいます。人間は本来、走ることが好きな動物で、小さな子どもは無尽蔵なエネルギーで朝から晩まで走り回っています。
ではなぜ走るのが嫌いになったのか。理由は簡単です「無理に」走らされるからです。息が切れるくらい頑張ってるのに「もっと速く」と煽られたり、もうフラフラなのに決められた時間を延々と走らされた結果、走るのが嫌いになるわけです。学校というのは走るのが嫌い人間を作り出すのに最適な仕組みを備えています。
なぜそんなことになっているかというと、学校では「速さ」以外にランニングの評価基準がないから。本当は過去の自分を超えていけばいいだけなのに、自分よりも身体能力の高い人と比較されます。しかも足が速くなるための技術を何ひとつ教えないのに、努力とか根性を要求するわけです。楽しいわけがありません。
ただ、そうやってランニングが嫌いになった人も、大人になって走り始めると、誰かに命令されたわけでもなく、自分のペースで走ることもできるので、ランニングの楽しさを取り戻します。ここまでは理屈でわかりますが、なぜかあれほど速く走るのが嫌だったのに、ランニングを続けていくと、ほとんどのランナーが「もっと速く」の世界に足を踏み入れます。
これって実はとても不幸なことではないかと思うことがあります。私自身は目標を持ち、そこを目指して努力を積み重ねるという行為があまり好きではありません。基本的には目標など立てないで45年間生きてきました。そんな私でもランニングにおいては「サブ3」という目標を立てることがあります。
なぜ私たちは速くなりたいと思うようになるのか。理由はいろいろ考えられます。
- 周りの人に褒められたい、高く評価されたい
- 成長を感じたい
- 達成感を得たい
だいたいこんなところではないでしょうか。いい結果を出せば周りの人が褒めてくれます。それはほとんどの人に心地よいもので、もっと褒めて欲しいから速く走れるように頑張ります。「全員」としなかったのは、私のような内向性の人間は褒めらることが喜びにはならないためです。
ではそういう人でも速さを求めてしまうのは、なぜでしょう。きっと自分が成長していく過程が楽しいからなのかもしれません。少なくとも私はこちらのタイプで、思ったように体を動かせるようになり、以前よりも自分をコントロールできている感覚が楽しくて速さを求めます。
でも、それって本当に幸せなのでしょうか。例えばサブ3という目標を設定したとします。これはサブ3を達成した状態が理想ということになります。ということは、現在の自分は理想に到達していないことになります。目標を立てるということは、今の自分を下げてしまう行為にもなるわけです。
そのコンプレックスを力に変えることができればいいのですが、何度挑戦しても目標に届かなかったとき、心理的には当然「自分はダメなやつだ」となるわけです。理想の状態に手が届いてないのですから、自分は未完成であり評価するに値しない存在だと心のどこかで思ってしまいます。
真剣に競技に取り組めば取り組むほど、目標に届かなかったときの自己肯定力が下がります。でも本当はどんな人でも現時点における完成形であり、現時点で足りないものなど何もありません。目標を達成できなくても、それは目標設定に無理があっただけで、ベストを尽くせたなら何も問題はないはずです。
目標が自分の人生の重荷になる。それが力になる場合もあれば、自分の人生を壊す可能性すらあるということは覚えておいたほうがいいかと思います。目標なんて持たなくても、いつもベストを尽くしていれば成長はできますし、目標なんて持たなくても毎日楽しく過ごせます。
目標がないとベストを尽くせない?
そう思う時点ですでに思考がずれています。ベストを尽くすというのは、そんな難しいことではありません。目の前にあることに全力で取り組むだけでいいんです。やらなくてはいけないことをやるのではなく、自分のやりたいことを全力でやればいい。それだけです。
オリンピック出場を目指すというのであれば、また考え方も違うのでしょうが、生涯スポーツとしてランニングを続けていきたいなら、好きなように走る(もしくは走らない)。こういう考え方があってもいいと思います。速く走れることと、人間としての魅力は1ミリも関係ないわけですから。
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