ランニングシューズは走力に関係なく選ぶ時代へ【アシックスやミズノが復活する方法】

RUNNING STREET 365で毎週のように新しいランニングシューズを紹介していると、ランニングシューズのトレンドのようなものが見えてきます。昨日、サロモンの「S/LAB PHANTASM(エスラボ ファンタズム)」を紹介する記事を書いていたときに、ふと気づいたのですが、もうランニングシューズを走力ごとに売るのは時代遅れなのかもしれません。

これまでのランニングシューズ、特に日本メーカーは走力に合わせてランニングシューズを展開していました。トップランナー向けのシューズやサブ3向け、サブ4向け、初心者用というように増やしていき、さらにはプロネーションの癖、着地方法ごとにラインナップを増やしてきました。

その結果が「どれを選んでいいのかわからない」状態になっています。その状態でさらに新世代モデルも発売し始めたので、アディダスのように最速モデルが2種類もあるというような状態になっているケースもあります。アディダスはまだラインナップが分かりやすい方ですが、それでも種類が多すぎます。

ただ、そのようにラインナップが増えすぎたのには、もちろん理由があります。初心者は足ができていないので、しっかり足を守れるシューズを作ったほうが、方向性がわかりやすく売れるという現実はあります。足を守るためにソールが厚くなり、アッパーも補強が加えられ、そうなるとシューズはどうしても重くなります。

重いシューズはスピードを出すことができないので、もっと速さを追求するためにサポートを減らして、ソールも薄くしていくわけですが、いきなりトップランナーが履くような軽くて薄いシューズを提供しても、ケガをするので走力に合わせていくつものモデルを作ったわけです。

ところが、最近は軽量で衝撃吸収性が高く、反発力のあるソール材ができました。これならソールを厚くしても重たくなりません。そして、アッパーもニットやプリント技術の向上で軽量でもしっかりサポートできるようになりました。こうなると、トップランナーが履いても初心者が履いても問題なくなります。

シンプルなラインナップの代表はナイキです。いくつかイレギュラーなモデルが発売されていますが、現在メインになっているのは、ペガサスとズームフライ、ヴェイパーフライ、アルファフライ、テンポの5種類で、それにケガ防止のためのシューズのインフィニティランとインヴィンシブルランの2種類だけです。

この中で誰にでもおすすめできるのがヴェイパーフライです。ただ、価格が高いのであまりお金を出せない人のために、ペガサスを用意しています。それでもペガサスは廉価シューズではなく、ナイキが1番売りたいシューズで、シューズとしてのクセもなく、デザインにも力を入れており、誰にでも進められる1足です。

要は懐具合に合わせてヴェイパーフライかペガサスを選べばいいということになります。ものすごく分かりやすいラインナップです。最近種類が増えてきて、迷走しそうになっていますが、基本的に購入者に迷わせないというのが、売れるものの条件になります。

Appleがスティーブ・ジョブズを呼び戻したときに、最初に行ったのがラインナップのリストラだったというのは有名な話です。シンプルでわかりやすいラインナップでないと、離れたランナーが戻ってくることはありません。アシックスもミズノも。

ただ、どちらも事業が大きくなりすぎて、いまさら再構築できないのでしょう。恐竜と同じです。環境の変化に対応できなくて滅んでいく。時代はいつだって繰り返すわけです。生き残りたいなら、抜本的な改革をしてラインナップをシンプルにすることです。

もうランニングシューズは走力で選ぶ時代ではありません。価格と走り方で選ぶ時代へと突入しています。フォアフットで走りたいなら、カーボンプレートの入ったモデルで、踵着地をしたいならソール形状がロッカー構造になっているタイプを選び、あとは予算に合わせて選べばいいという状態。

どのシューズも250g以下になっていますが、クッション性が高くてケガのリスクはかなり低くなっています。さらにワークマンのように2,000円以下でそこそこ走れるシューズも出ているわけです。1万円以上の値段を付けるなら、それに見合った付加価値がないと売れるわけがありません。

アシックスもミズノもどこかで大きく舵を切ることにはなるはずです。コロナ禍でこれまでと同じようにシューズの開発ができませんし、さすがにナイキやアディダスに遅れをとっているこの状態をなんとかしようとは考えているはずです。答えはシンプルです。ラインナップを減らすことです。

ラインナップを減らして、高機能モデルと普及モデルの2つにリソースをつぎ込む。多少の派生モデルがあるのは構いませんが、購入者が迷わないようにストーリー付けがないといけません。誰もが簡単に自分が履くべきシューズを見つけられる。この状態に持っていけるかどうか。

繰り返しになりますが、いまはもうトップランナーから初心者まで幅広い層に適したランニングシューズを作る技術とノウハウがあります。もう走力ごとにシューズを作る必要性がありません。すべてを白紙にして再構築できるのか。それが日本メーカー復活の鍵を握る……個人的な願望ですけどね。

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