W杯の日本対ドイツで見せたリュディガーの走り方についての考察

W杯の日本対ドイツでドイツのリュディガー選手が日本の伊藤選手に対して、バカにするような走り方をしたとして話題になっていました。まぁ確かにそのように見えないこともないのですが、体の使い方について試行錯誤している立場、サッカーで食べていくことを目指した立場からすると、全然ありなのかなと。

走り方が奇妙だったことと、舌を出して走っていたことが、余計に悪いイメージを与えているようですが、まず大前提としてリュディガー選手は絶対に伊藤選手に競り負けないことが求められていて、そのためには少なくとも伊藤選手よりも速く走る必要があります。

彼は絶対に競り負けない方法としてあの走り方を選んだわけです。そこから考えれば、あの走り方はスピードを出せることが容易に推測できます。あの走り方に切り替えて、明らかに1段加速していますし、背筋を使った走り方をしていて、理屈としては間違っていないというのが私の感想。

それをTwitterで呟いたら、他の選手が同じ走り方をしないのはなぜかと聞かれましたが、まずあの走り方は誰にでもできるわけではありません。圧倒的な背筋かあり、なおかつ黒人特有の弾けるような特性を持った筋肉でなくてはいけません。そして、何度も練習していないと咄嗟のときに実行することはできません。

そして、何よりもあの走り方をした場合に、ボールを扱うことができません。スピードが速すぎるのと、ボールの位置を確認できないのに加えて、そもそもキックのフォームに入れません。あのフォームからボールを蹴ろうとすると、ワンテンポ遅れるので反対にボールを奪われてしまいます。

しかも左右の動きができません。ただまっすぐに走ることしかできないわけです。ただあのとき、リュディガー選手に求められていたのは、伊藤選手の前に位置してボールに追いつかせないことでした。ボールがゴールラインを割ればよく、ボールを蹴る必要はなかったわけです。

では、あの馬鹿にしたような表情はどうとるか。おそらくあれはわざとやったのでしょう。サッカーは駆け引きのスポーツですから、相手を苛立たせるためにやった可能性はあります。ただ、あれは独特なフォームを生み出す副産物的なものでもあるような気がします。

舌を出すことで、私たちは筋肉を弛緩させることができます。正確には歯を噛み締められなくなるので力みがなくなります。これはトップアスリートも取り入れている手法のひとつで、あの走り方に移行するときに、力みをなくす必要があって、あえて舌を出していることが考えられます。

ただ最初に試したときに、周りにいた人が笑いだしたりしたのでしょう。その動画を撮影していたかもしれません。そこで「これは使える」とひらめいたというのが私の推測。実際に私も同じような走りをした動画をTwitterにアップしたら、友人に「笑っていいやつ!?」って書かれました。

自分でやってみるとわかるのですが、かなり体に負担がかかります。もしかしたら、それを悟らせないためにおどけてみせているのかもしれません。パンチを受けたボクサーが「効いてません」とアピールするような感じで。

ただ、プレーそのものがサッカーとして良いかどうかは別問題。どういう理由があっても相手を不快にさせる場合は、紳士のスポーツとして批判されます。とはいえ、サッカーでは非紳士的な行為はいくらでもあり、そこにサッカーの魅力や面白さが詰まっています。

そしてリュディガーの走りがどう捉えられるかはサッカーの世界の話であり、ランナーはあそこから何かをつかもうとするべきです。まずは自分で同じ走りを試してみる。そこから何かを感じ、自分の走りにフィードバックさせるわけです。ランニングの面白さはそこにあるわけですから。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次