プライベートレッスンで最初に教えることは、ランニングというのは地面を蹴って走る競技ではないということ。自己流で走ってきた人で、球技などをしてきた人はこの意味が理解できないことが多いのですが、走り方を教えていくうちに驚いた表情をすることになります。
「こんなに軽く走れるなんて……」と、これまでランニングを習ってこなかったことを後悔する人もいます。そして、あまりにも軽く走れるようになり、スピードの出し方がわかるとマラソン大会に出てみようと思ったり、記録を狙ってみようと考えたりし始めます。
そうなると「どれくらいのペースで走ればいいのか」という話になりますが、これは明確な数字を示すことはできません。なぜなら、最適なペースは人によって違うから。あえて言うなら、フルマラソンは普通に会話ができるペースで、ハーフマラソンは苦しいけど何とか会話はできるペースでしょうか。
呼吸方法などを聞かれることもありますが、会話ができるペースなら呼吸なんて気にする必要はありません。呼吸が気になるなら、それはオーバーペースです。もちろん、初心者から中級者レベルくらいの話で、シリアスランナーになると話は少し変わります。
そして速くなるにはどうすればいいかとも聞かれますが、ランニングを習いにきている人には身も蓋もない話になりますが「筋力を付けつつ痩せる」が唯一の方法になります。それだけで速くなるわけではありませんが、1日10km走って、体重を標準体重マイナス5kgまで持っていけばそこそこ走れるようになります。
ランニングフォームとか練習方法なんてほとんど関係ありません。軽ければ速く走れるというのは真理であり、絶対に避けては通れない道です。世の中には体重100kgでサブ3を達成する人もいますが、その人が痩せればもっと速く走れます。
痩せ過ぎは良くないという声もありますが、それは体脂肪率が1桁レベルの人の話で、標準体重前後の人が痩せても、健康面で大きなマイナスにはなりません。細かくいえば不健康ではありますが、標準体重マイナス5kgくらいなら許容範囲内です。
どれだけ追い込む練習をするよりも1kg痩せたほうがタイムが上がります。もちろん筋力を落としてはいけませんが、毎日コツコツ走っていれば、必要な筋肉が落ちることはありません。ボディビルダーみたいな体型なら話は変わりますけど、一般人は程よく筋トレしておけば問題ありません。
じゃあ何のために練習するのか。なぜランナーはみんな月間走行距離を誇るのか。それは他の方法を知らないから。どうすれば速くなるかを考えたことがないから、走った距離は裏切らないというトップアスリートの言葉を信じて走り込んでしまう。
とにかく走れば結果が出る。ランニングを始めたばかりのそういう成功体験を捨てられないというのもあります。でも、ランニングを始めたばかりの成長を伸び悩んできたときに再現することはできません。伸び代が80あったときと10しかないときでは成長の幅は異なって当然。
とにかく痩せればいいんです。痩せてほどほどに練習すれば速くなります。でも、とても不健康なことではあります。楽しくもありません。私のように美味しいものを食べるのが何よりも好きという食いしん坊にとって、食べられないことはストレスでしかありません。
だからどこかで妥協することになるわけです。「これくらい痩せれたらいいかな」となってそこがその人の限界になる。私がサブスリーを達成できないのは、食べ物の誘惑に勝てないから。本気なら体重を落とせばいいんです。でもそれができないから凡人の域を超えられないというわけです。