アディダスの「ADIZERO ADIOS PRO EVO 1」はとんでもないシューズだった

写真のシューズはADIZERO PRIME X 2 STRUNGです

「ADIZERO ADIOS PRO EVO 1」について実際にレースで履いてみるまでわからないというニュアンスの話をしましたが、ベルリンマラソンで女子の世界最高記録が2分も縮まるという結果になり、とんでもないシューズだったことが証明されました。

アディダスは以前から女子の記録更新が目立っており、体重が軽いランナーや非力なランナーほどアディダスのテクノロジーの恩恵を受けやすいのかもしれません。もっとも新谷仁美選手は日本最高記録の更新にはならなかったので、現時点では万能シューズというわけではなさそうです。

多少は相性があるか、もしくは走り方の影響を受けるのかもしれません。ティギスト・アセファ選手は「ADIZERO ADIOS PRO EVO 1」に適した走り方ができていて、新谷仁美選手はそうではなかった。もしくは新谷仁美選手がなんらかの不安を抱えていたか。

男子ではエリウド・キプチョゲが優勝しており、「ADIZERO ADIOS PRO EVO 1」の華々しいデビューとはなりませんでした。トップアスリートの世界は本当に紙一重で、今回のようにレースでしかわからないこともあるので、これからレースでアディダスがノウハウを蓄積してからが本番なのかもしれません。

理想は男子も世界最高記録を更新することでしたが、それが起きた場合にはランニングシューズ競争がさらなる激化をしていく可能性がありました。今回はそうなりませんでしたが、どのメーカーもシューズの軽量化に向けて動き出すはずです。

ただ、以前から言われているようにシューズは軽ければいいというものではないということも、今回証明されました。軽さは大事。特に非力なランナーにとって100gの差は大きく、だからこそ女子で世界最高記録が出たのかもしれません。

当然それくらいのことはアディダスも想定していたはずです。もしかしたら男子もこれまでにないハイペースでレースが進んだなら、また違った結果になった可能性もあります。要するに、まだ選手もシューズを信用していないし、どう走るのがいい結果になるのかわからないのでしょう。

そう考えるとティギスト・アセファ選手はかなり思い切った挑戦をしたことになります。普通に考えたら世界最高記録と同じくらいのペースで走るはずです。そして後半になって余力があればペースを上げて世界最高記録を更新するわけです。

でも2分以上も世界最高記録を更新したということは、最初からペースが速かったことになります。それは自分を信用してのことなのか、感覚的なのかはわかりません。でも、そういう走り方は日本人にはなかなかできないこと。

いや、日本人に限ったことではないですね。世界でそれをできたのがティギスト・アセファ選手だけなのですから、他の選手を否定する必要はありません。ただ、ティギスト・アセファ選手の度胸がすごいということ。ただ、ここからは2時間11分53秒が世界標準だということ。

女子も2時間10分を切る時代がやってくるのかもしれません。そして男子も2時間を切る時代に突入する。ランニングシューズがさらなる進化をしたとき、それらの壁はいとも簡単に崩れ去るはずです。そしてそれは本当に目の前まで来ています。

シューズの進化に否定的な人がいることは知っていますが、私はシューズ開発も人間の限界への挑戦のひとつだと思っています。人生をかけてシューズ開発にチャレンジしている人がいる。その背景にも物語があると思うとワクワクが止まりません。

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