中国による香港への国家安全法制の導入を巡り、世界各国が非難しており、日本がそれに加わらないというニューズが出たり、それはフェイクニュースだという反論が出たりいろいろありますが、わたしたち庶民として知っておかなければいけないことがあります。
どの国のトップも香港が中国に取り込まれる未来を止められないことを知っています。知っていながら非難しています。中国が約束を守らないから仕方ないことなのですが、非難しようがどうしようが結局香港は独立もできません。
いや独立をしたとして、とんでもない未来が待っています。今日はその話をしておきます。
今回の問題のおさらい
まず伝えておくことがあります。わたしは中国に肩入れするつもりもなく、基本的には中立の立場にあると思っています。香港への国家安全法制の導入は「それは約束が違う」とは思っています。でも、それと香港の自由は別問題です。
この話をするときに香港について歴史から伝えておく必要があります。
1842年 南京条約で、香港島を清朝からイギリスに永久割譲
1860年 北京条約で九龍半島南部の市街地を割譲
1898年 深圳河以南、界限街以北の九龍半島、新界を99年間の期限で租借
香港はこのような流れでイギリスの植民地になりました。南側から順に割譲されましたが、最後は99年間の租借になります。これが実に巧妙でうわさ話も含めて面白い物語がありますが、ここでは説明を省きます。
99年借りるわけですから99年経過した1997年に、借り入れた部分を返還する必要があります。これはイギリスも依存はありません。ただ、ここで中国は残りも自分の土地だから合わせて返せと言います。
もちろんイギリスは反発します。ただ中国が強硬な態度で、「返さないなら◯◯をしない」と言ってきます。これが香港がこれからも独立できない理由のひとつで、後ほど詳しく解説します。
すったもんだの末、香港は中国に戻ってきます。ただし、50年間は自治を認めるという約束です。50年の猶予を与えるから海外に逃げるなり、中国に順応するなり選べというわけです。実際に多くの香港人が海外に逃げています。
2047年には香港は完全に中国に取り込まれる。これは国際的にも誰も文句は言えません。約束だからです。でもあと27年も残っているのに、実質的な自治権をとりあげるような国家安全法制の導入を決めようとしているから、世界各国が怒っているわけです。
中国があと27年待てなかったのには事情がありますが、それはまた別の機会に話をします。
香港では圧倒的に水がない
それではなぜイギリスは香港を返さなくてはいけなかったのか。答えは簡単です。香港には水がありません。まったくないわけではありませんが、雨水を貯めておくくらいしかできません。香港には大きな河川がありません。トイレの水に海水を使っているほど水がありません。
では745万人分の水をどこから供給しているのか。それが中国なのです。中国の深センからパイプラインで水を供給してもらい、生活や工場などで使われています。約80%が中国からの供給です。イギリスが香港を返さなかった場合「水の供給を止める」と中国が脅したわけです。
合わせて武力行使もちらつかせましたが、決定的だったのはこの水の供給です。水がなければ生活していくことができませんし、工場も稼働できません。
中国がそんなことをするわけはないと言う人もいますが、そんなことをしないような国が約束を破って国家安全法制の導入をすると思いますか?では「何者かがパイプラインを爆破した」とすればどうでしょう?満州事変を起こした国があったことを忘れてはいけません。
電力も同じく中国から供給してもらっていますが、これの依存率は20〜30%程度ですのでネオンをすべて消せばなんとかなります。火力発電所が老朽化しているという問題もありますが、すぐに困る問題ではありません。でも水はそういうわけにはいきません。
もう分かってもらえたかと思いますが、この問題がある限り香港の独立はありえません。100歩譲って独立できる方法があるなら、中国から友好的に独立するしかありません。そして中国共産党が支配している限りそれは絶対にありません。
内政干渉はすべきではなく中立であるべき
日本人でも「香港がんばれ!」「中国に負けるな」「独立を!」なんて言っている人もいますが、これは安易すぎます。確かに問題は中国にあります。でも、中国が「わかった、独立させてやる。でも水は止める」としたらどうします?
責任取れますか?諸外国はどういうつもりで香港を支援するかわかりませんが、少なくともこの水問題を解決する方法も合わせて支援しないと、応援しているようで香港を追い込んでいるだけということになりかねません。
海水を浄水にするための施設を立てる。安全な水を船舶で供給し続ける。そこまで行って初めて支援になります。良いとか悪いとかいう話ではなく、現実的に水を抑えられている以上、香港に自由はありません。そんなことは香港の人たちも重々承知です。
それも知らないで騒ぐべきなのかどうか。それも他所の国の内政干渉になるのに。世界には「内政不干渉の原則」があります。今回は中国が香港に対して約束を破りましたが、自国内のことなので他の国にこれをあれこれ言うのは「内政不干渉の原則」に反します。
基本的にこの問題に関しては中立であるのが正解です。実際にそれができるほど日本政府は図太くはないのでしょうが、旗に色を付けないことが政治的には正解です。弱腰だと思われますし、中共の工作だと言われるかもしれませんが、動かざること山の如しです。
まぁ「約束と違うじゃないか」と避難するくらいはしておいてもいいのですが。それをしてどうなるという問題でもありません。
まとめ
この水の問題をどうにかしないことには、香港の独立も自由もありません。遠い場所から煽るのは自由ですが、どうやっても叶わないことってあるんです。唯一できることがあるとするなら、中国共産党の解散しかありません。
でもその解散の過程で最初に犠牲になるのも香港です。間違いなく世界の火種は香港にあり、それは中国共産党の仕組んだものでもあります。
繰り返しになりますが、わたしは中国の肩を持っているわけではありません。事実として知っておくべき歴史があり、その歴史を追えば香港に逃げ道がないことは明白です。でも世の中にはそれを煽る人がいます。なぜか?
香港を火種にしたい人がいるからです。とてもシンプルな話です。中国共産党もそうですし、他にもそれを願っている人がいます。そのあたりをきちんと理解した上で煽るのは好きにすればいいのですが、なんとなく「かわいそう」で旗を掲げるのは危険かなとわたしは思います。
では何をすればいいのか。個人でできることなんて何もありません。ただ見守りるだけ。そしていざというときに本当に有効な手助けをするだけ。庶民にできることなんてそれくらいしかありません。
香港に縁のある人、香港が好きな人が読むと納得できないかと思います。だとすれば行動を起こすしかありません。それはきっと遠くから非難することではありません。