中国の面白いというかもったいないなと思うことのひとつに、歴史的に重要だったり観光客が喜びそうな景観を簡単に取り壊したり、修復させたりすることがる。百歩譲って修復はしょうがない。世界遺産であろうと、保守メンテナンスをしっかりしていないとあっという間に朽ちてしまうのだから。景観はどうだろうか?北京オリンピックに向けて多くの胡同が取り壊しにあったと聞く。耐久性に問題のある胡同も多いし、土地の有効活用という意味では平屋の胡同よりも高層マンションを建てるほうが人口問題で苦しむ北京においては重要なのだと思う。
問題は古きよき北京の街並みを取り壊して、昔風の建物を並べることにある。その代表格が前門だ。前門は北京の浅草と呼ばれていた時代もあるほど風情のある街だったらしい。ところが北京オリンピック開催に合わせて大規模な再開発が行われた。その結果、過去を知る人にとって「これじゃない」感いっぱいの街になってしまった。以前の姿を知らないおいらでさえ違和感を感じずにはいられない状態だが、北京市民はそんなこと気にすることなく前門大街を楽しんでいるように見える。
前門の正式名称は正陽門と呼ばれ、北京内城の正門として皇帝や皇族が使っていたということになっている。ただ、清の皇族たちは紫禁城よりも西や北に邸を持っていたので、実際にここを使うのは正式な行事の時だけだったんじゃないかとおいらは考えている。ただ、当時から賑やかな街であったようで、歴史のあるお店がいまだに残っていたりもするらしい。旧北京駅(現在の鉄道博物館)がここにあるのも人が集まる場所であることを示している。前門大街につながる大柵欄では清時代から映画が上映されていたとか。
前門大街はいまのところ残念な感じが否めないが、数年後にはもっと多くのお店が入り、さらににぎやかになることは間違いない。そしてさすが路地の文化である。1本路地に入ると中国らしい、地元の人が暮らす街があったりもする。北京にいるといがいと家常菜(家庭料理)のお店を見つけることができないけど、前門大街の1本西側の通には家常菜のお店が何軒も並んでいる。観光客向けに北京ダックを置いてあるお店も少なくない。中華料理らしい中華料理が食べたいときはここに来ればいい。ただし、1皿の大きさが半端ない。
前門大街から西側には小吃街があるので一人旅の場合はこっちのほうがおすすめかもしれない。台湾街のようなものもあって、台湾小吃のフードコートもある。美味しいものという意味では天津名物「狗不理」も大柵欄に出店しているので食べ物に困ることがない街でもある。王朝時代もここで役人たちが朝ごはんや晩ごはんを食べていた姿を思い浮かべながら朝から小籠包をほお張るのも楽しい。ただ、観光地だけあって少し割高な気がする。それでも朝ごはんは10元(150円)程度だし、晩ごはんだってビールを呑んでも50元(750円)かからない。
衣類のお店もたくさんある。質によってピンきりではあるけど中華風の服も売っているのでお土産なんかにいいかもしれない。もちろん他にもおみやげはいくらでも買える。本物かどうかあやしい翡翠から、1日使ったら壊れてしまいそうな玩具までひと通り揃えられる。個人的には買い物は南鑼鼓巷でほとんど済ませてしまうけど、ここで値段を確認しておく(値札がきちんとあることが多い)と他の場所に行ったときにぼったくられなくて済む。
前門大街は好みが分かれそうな街ではあるけれども、便利だし散歩には悪くない。歩き疲れたらスターバックスもある。なによりも中国人が多いのがいい。老若男女、いろんな世代の人達がここに集まる。時代は変わっても北京の人たちにとって憩いの場所であり、あこがれの場所でもあるのかもしれない。かつての前門大街はもうないけど、これからまた新しい歴史を作っていくんじゃないかな。変わっていく姿を見続けるのも中国の楽しみ方のひとつだと思う。
コメント
コメント一覧 (1件)
[…] 『前門大街・大柵欄』作られすぎた街だけどそれが中国らしい […]