サービス業とは【お客様は神様ではないかもしれないけれど】

数年前から宿の手伝いをして、そしてこの春からは飲食店の立ち上げの手伝いをして感じること。それはサービス業のあり方に限界がきているということ。サービス業はアルバイトによって成立しているような業種ですが、おそらくアルバイトに頼っていいのは完全なるマニュアルを作った職場のみ。

たとえばマクドナルドは完全なるマニュアルがあり、それに従って仕事をすればアルバイトでも成立します。もっともそれは「ロボットとAIで成立する」に近いものがあり、そこも限界がきているのですが、それはまた別のお話。

私が限界を感じているのは従来型のサービス業で、本当のサービスを提供するというのはおそらくアルバイトでは無理なんではないかということ。たとえばお客さんが共有で使うテーブルが汚れていたときに、アルバイトだと指示されれば掃除しますが、指示されなければ何もしない人がほとんどです。

指示されていないことを勝手にやって怒られるのも嫌ですし、そもそもお客さんに喜んでもらいたいという考え方がないので、テーブルが汚れていたところで気にもならないわけです。でもマネージメントする側はそういうところが気になるわけです。

マネージメントする側の人がすべてそうだとは言いません。私が北海道を去った理由のひとつが、その感覚がまったく共有されなかったからというのもありますので。経営者だって全員が「お客さんのため」と考えているわけではありません。

ちなみに私は「お客様」という言葉を使う人を信用していません。お客さんは神様ではありませんし、「様」を付けなくてはいけないほどへりくだる相手だとは考えていないので。人はどんな立場でも同格で、その関係において自分が一歩下がるというのがサービス業における正しい立ち位置だと考えています。

それはともかく、サービス業はお客さんに喜んでもらうのが仕事。ところがアルバイトは時間内に与えられた仕事をそつなくこなすのが仕事。同じことをしていても、実際の行動はそれぞれまったく違います。前者は困っていそうな人には積極的に声をかけますし、後者はただ時間が過ぎるのを待つだけ。

もちろんアルバイトのすべてがそうだというわけではありません。人によってはお客さんに喜んでもらうために働いている人もいます。でも、お客さんのために何かをするという意識を持って働いている人は圧倒的に少数派です。

お客さんのために働いているという意識を持つ。言葉にすると簡単なのですが、実行するのは簡単なことではありません。まずお客さんの気持ちを考える習慣がないとできません。しかもそのときに自分の損得を無視する必要がありますが、こうなると天然記念物レベルです。

でもサービス業で求められるのはお客さんの立場になって行動できる人。困ったことに、そういう教育がすっぽり抜け落ちているのが今の日本という国。自分を抑えて誰かのために働く。かつての日本にはそんな感覚を持った人がいましたが、今はそういうことをすると不思議がられます。

何をするにしても「魂」が抜け落ちているのかもしれません。サービス業はサービスを提供する気持ち、スポーツではスポーツマンシップなど、本質的なものが欠けている。目標だけを達成すればいい、言われたことだけをしていればいい。それじゃあ世の中は上手く回りません。

別にお客さんに媚びへつらう必要はありません。ただ喜んでもらうために何をするか。そして何をしてはいけないかを自分なりに考える。でも、それをアルバイトに求めるのは無理があるので、マニュアルというものがあります。魂が抜けていてもそつなく行動できるように。でも、それもそろそろ限界のような気もします。根拠はありませんけどね。

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