自分で美味しいと思えないものを出してしまうのは罪悪感がある

お手伝いをしている宿の朝食係をしていて、お客さんに「美味しかった」という声をもらえるようになってきたのは何度かお伝えしましたが、食材の関係で自分で自信を持って出せないものを出さなくてはいけないケースがあります。

朝食は500円で付けているので、どうしても冷凍食品に頼ることになります。たとえば野菜は価格変動がかなり大きいので価格が決まっている冷凍野菜を使わなくてはいけません。原価率を30%くらいにできるなら話は変わりますが、料金500円ではそれも難しいので安定した価格でないと困るわけです。

ただ、冷凍野菜も最近のものはしっかりとしていて、解凍方法や調理方法を間違えなければ、自分で食べても「これ美味しいやん」となります。ただ、私が担当する前から冷凍庫に入っている食材の中には、あまりお客さんに出したくないものもあります(そんな食材だから使われず残っているのでしょうが)。

今はそういうものを入れ替えている段階ですが、消費しないことには入れ替えもできません。なのでお客さんに出すわけですが、そのときの罪悪感というのは想像以上のものがあります。なんだったら、在庫をそのまま処分してしまいたいくらい。

でも、食べ物であることには変わりないわけで、処分なんてとてもじゃないですができそうにありません。なので、なんとかアレンジできないかと頭を悩ましているところです。風味が悪いのでその風味を打ち消すものを組み合わせればまた変わった感じになる可能性はあるので。

雇われた料理人の場合、料理長クラスでないかぎり、自分で美味しいと思えないものでもメニューにあれば、妥協して作らなくてはいけないのかもしれません。どの世界も理不尽なことはあるものです。もっとも、それに耐えられなくなって独立するのでしょうが。

今日はその朝食について、作り方を社員の方に教えることになっています。手間がかかり過ぎているので「難しい」と言われるかもしれません。でも朝ごはんが宿の生命線になると考えているので、なんとかして習得してもらう必要があります。

もっとも難しいことはしていません。ただ手間をかけている。たとえばお米を炊くときには、無洗米なので30分ほど水に浸すようにしています。以前は水に浸すどころか早炊きしていたようですが、それでは美味しく食べてもらえません。

ただ30分ほど水に浸す場合、7時の朝食に合わせるとなると5時15分には水に浸しておく必要があります。当然勤務時間が決まっている社員の方にはそれができません。これをどうするかは、かなり大きな課題になってしまいます。

でも、どこかで普通じゃないことをしないと、競合との違いを出せません。伊豆高原には星の数ほどペンションなどの宿があり、ライバルに負けないだけの何かを提供しなくてはいけません。もっとも、それが料理である必要はないのですが。

実際に、以前は料理はそれほど手間を掛けず、掃除を重視して高い評価を受けていました。引き継ぎ前の段階でBooking.comでの評価は9.2もありました。私の仕事はこの評価を下げずに次の人にバトンタッチすることにあります。

そのためには、やはり自分で自信を持って出せる料理を提供するしかないと考えています。なおかつ、次の人にバトンタッチできる内容で。もっともその食材はあと数回で使い切るから、どう使うかは私だけの課題。ただ美味しく仕上げられたら使い続け……いやどうやっても無理、あの食材だけは。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次