先日、新宿の武蔵野館で映画「サマーフィルムにのって」を観たときに、中国で話題になった映画「少年の君(少年的你)」も上映していて「これは観なきゃいけないやつ」というレーダーが反応。本厚木にあるあつぎのえいがかんkikiでも上映中ということで、映画が1,100円になる水曜日に朝から行ってきました。
中国で行われている過酷な受験戦争とイジメ問題を軸に、優等生のチェン・ニェンとチンピラのシャオベイの2人がお互いを支えに生きていくという物語です。毎度のことながら細かいことは書きません。まだ上映中ですし、これから観るつもりの人もいると思うので。
ただ感想というか、感じたことを伝えるために、どうしても映画の内容に触れなくてはいけないところもあるので、ネタバレをしたくない人はページを閉じてもらえればと思います。第93階アカデミー賞にもノミネートされた作品なので、映画好きは楽しみにしていると思いますので。
この映画の物語の軸はすでにお伝えしましたように、受験とイジメです。「サマーフィルムに乗って」と同じ世代の若者を描いているのに、この2つの世界はパラレルワールドのようで、とても同じ地球上で起きていることとは思えません。実際に映画の世界のパラレルワールドなわけですが。
まずは受験の話。中国の受験はとても大変とは聞いていましたが、それはもう想像を遥かに超えた世界のことで、映画だから誇張されているところはあるのでしょうが、それはもう本当に戦争のようなもの。そういえばあの国には科挙という制度があり、まるでそれがまだ続いているかのよう。
北京大学や清華大学といった超一流大学に合格することで、自分の未来が大きく変わります。貧乏な暮らしから一気に明るい未来が開けるわけです。地方出身者にしてみれば、千載一遇の機会であり、命がけて挑むことになるのですが、こういうハングリーさはすでに日本にはないものです。
私が受験生だった時代には、この国の受験戦争の名残がまだ残っていました。良い大学に行って、良い会社に勤めて……が理想だった時代。今の中国がどこまで厳しいかはわかりませんが、「少年の君(少年的你)」の世界においては、人生をかけて学生生活を送っている人がいます。
一方でその流れに乗れなかったシャオベイのような存在もいます。進学を目指す優等生のチェン・ニェンもチンピラのシャオベイも、お互いの存在が救いとなっているのが興味深いところ。人間は自分にないものを相手に求めてしまい、それが相互依存にまで発展するのが青春。
受験戦争については「そういうこともあるよね」くらいの感情しかありませんが、ここにイジメが絡んでくるので物語が複雑に展開されます。私はいまだに中国は共産主義というイメージが抜けきらず、そういう社会においては日本のようなイジメは起きにくいと思っていました。
キューバでは本当の意味での平等を学びましたし、私が接する中国人はみんな親切だったというのもありますが、でもイジメというのは優位に立ちたいという感情があるから起きるもので、中国には実質的な資本主義が導入され、受験戦争もあって個人の優劣が明確になり、イジメが発生する環境は整っているわけです。
現在の中国はイジメに対して国が本腰を入れて対策をしているので、どうなっているかはわかりませんが、でも誰かの上に立ちたいという感情を人間が持ち続ける限り、イジメはなくなりません。きっと日本と同じようにイジメも陰湿化しているのかもしれません。
映画の中で、最終的にイジメっ子は死んでしまいます。イジメられたから殺したというわけではありませんが、イジメ続けたことが「死」に繋がります。イジメをするということは、自分の命のリスクがある。イジメをしている人はそのことに気づいていません。
別に報復を進めているわけではありません。報復なんてしないほうがいいに決まっていますが、イジメられている人に報復をするなとも言えません。相手を殺したいと思っている人もいるでしょう。それこそ自殺するくらいまで追い込まれているなら、相手を刺してもおかしくありません。
意外とそういう事件が表に出ていないのは、実際にそうする人がいないのか、それとも隠されているのか。でも、イジメの応報として「死」が待っている可能性があるとすると、それが抑止力にもなるんだろうなとは思います。良いことか悪いことかは別として。
人をイジメると報復で殺される可能性がある。とてもあたり前のことであり、いずれ日本でもそんな事件が起きてもおかしくありません。誰も幸せにはなりませんけど、その認識が広まったとき、この国から、この世界からイジメは消えるかもしれないなんて、ちょっと悲しいことを思ってしまいました。
でもきっと世界からイジメはなくなりません。真面目に生きていても損をすることはあり、報われないことだっていっぱいあります。本当に大事なのは、そういう歪んだ世界でどうやって生きていくかということ。その答えのひとつが映画「少年の君(少年的你)」には描かれています。
上映期間はそれほど長くないかと思いますので、気になる人は早めに観に行くことをおすすめします。
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